株式会社Cake.jp

株式会社Cake.jpは、ケーキ・スイーツのECサイト『Cake.jp』を運営する会社だ。特色は誕生日ケーキをはじめ、写真ケーキやキャラクター（IP）との公式コラボケーキ等、ハレの日を盛り上げるスペシャルなホールケーキ・スイーツが充実していること。このワクワクするようなラインナップは、『Cake.jp』ならではのものだ。

スイーツEC市場は『Cake.jp』の登場まで、空白であった。「お店が空いている時間に買いに行けない。持ち運びが大変。欲しいケーキが売っているか分からない。似たケーキが多くマンネリ化している。」と、リアルでのスイーツ購入の「ペイン」を挙げるのは、創業者で代表取締役社長の髙橋優貴氏だ。

『Cake.jp』が登場する前は、ECでの購入も不安要素が多かった。必要な日に確実に、イメージ通りのケーキが届くか。配送時に崩れてしまうことも多い。洋菓子店サイドも、オペレーションの難しさから、容易にEC対応できない状況にあった。『Cake.jp』は、このような数々の課題を解決した。

『Cake.jp』は約1,700店が加盟するマーケットプレイスで、150万人の会員を抱える（いずれも2023年1月現在）。限られた商圏では買う人が限られ、売る商品も定番ケーキ中心にならざるを得ないが、『Cake.jp』の規模になれば、ユーザーは選択肢が増え、商機が拡大する加盟店もチャレンジングな商品を提供できる。さらに、注文と配送は『Cake.jp』が管理してくれる。

ユーザーから受けた注文は、『Cake.jp』の管理システムを介して加盟店へ送られる。配送も、出荷こそ加盟店が行うが、ユーザーからの問い合わせ対応、遅延等のトラブル対応等の管理は同社が行うので、店側は安心してECに参画できる。梱包資材も、崩れない工夫を凝らした独自のもの（特許取得済）を提供する。新しい商品を企画したい店側には、IPや有名レシピを絡めた商品開発を共同して行う。
「街の洋菓子屋さんの課題の一つが商品力。我々のレシピを利用することで売れるものを、売れ残りのリスクなく、注文販売で提供できます。経営も安定します。」（髙橋氏）

加盟店から得る販売手数料が同社の収入となるビジネスモデルだが、そのオペレーションは独自であり、同社のコントロールでユーザー、店側の双方に大いに利する仕組みとなっている。これが、他ECモールとの大きな違いでもある。加盟を希望する店は後を絶たない。会員数も右肩上がりで増えている。ケーキを買った人がSNSに上げ、それが共有、拡散されて『Cake.jp』の認知度も上がる。“ハレの日のケーキは『Cake.jp』で”という意識が醸成される。このような好循環で『Cake.jp』は急成長中だ。

髙橋氏は、元はFlashコンテンツの制作を手掛けていた。デザインとの相性がいい商材としてケーキに注目し、「ネット上に自分が買いたいケーキがなかった」と感じていたこともあり、現在の事業を着想した。その中で、街の洋菓子屋が抱える数々の課題を知った。店舗では、ショーケースに多くの種類の商品を並べる必要がある。それらを作ると労働時間は長く、商品の廃棄率は高くなる。そこで髙橋氏は、「EC=予約販売」にすれば解決できると考えた。事業を立ち上げるも、当初は苦戦した。時代の先を行き過ぎていたのだ。だが、いつしか時代が追い付いた。様々な分野でECが普及し、冷凍技術も進化し、何よりSNSが普及したことで『Cake.jp』は急速に広まっていった。

今後の伸びも期待できる。「国内スイーツ市場は2.2兆円と大きく、そのうち通販市場は880億円。4%です。イギリスは6%、中国は11%もあり、日本も諸外国並みに拡大の余地があります。アパレル業界は『ZOZOTOWN』の誕生等により、2010年代から一気にEC化が進みました。一方でケーキは生ものなので、在庫保管、配送難易度の高さからEC化が遅れていました。しかし、冷凍技術も発達し、アパレルに10年遅れましたが、2020年代は一気にEC化が進むと見込んでいます」と髙橋氏は言う。コロナ禍で起きた冷食ブームも追い風だ。「目指すはケーキ版『ZOZOTOWN』」と髙橋氏。基盤は着々とできつつあり、その成長に期待した数々の有望VCが出資し、資金も十分だ。

独自の仕組みに加えて、大きな強みがオリジナル商品だ。同社では加盟店の1,700店の強みや製造キャパシティのネットワーク化を通じて、洋菓子工場では実現が難しい小ロットかつユニークな商品の生産を可能としている。店ごとに個性もある。それぞれに得意な商品があるほか、企画が得意な店、量産が得意な店等様々だ。それらを熟知した上で、レシピ開発、コラボ先のIP版権の獲得等を同社が行い、適材適所の店に作ってもらう。

近年、話題になったケーキは『まるごとメロンケーキ』。マスクメロンを1個使い、果肉をくり抜いてスポンジ、メロン、いちご、生クリームの層をミルフィーユ状に詰め込んだ。断面のインパクトは抜群で、大いに拡散された。このような素敵なケーキを出せば、誕生日や記念日だけでなく、ユーザー自らが使う機会を考え、需要が喚起される。

コラボ商品も人気だ。アライアンスは同社が得意とするところ。漫画のクオリティがそのまま再現されている『ワンピース』のゴムゴムの実ケーキ、推し活用のタレントやvtuberコラボケーキ等多彩だ。相手方企業からの問い合わせも絶えない。このようなオリジナルケーキを圧倒的な規模で売る力があるのは『Cake.jp』だけ。オンリーワンの大きな強みだ。

『Cake.jp』は個人向けのプラットフォーム事業がメインだが、法人事業も順調だ。カフェ、店舗、催事場等世の中にケーキを必要とする場は多い。そのような場に企画提案・商品提供を行う。ユニークなものでは、ケーキの自動販売機。これは自販機のメーカーからの声掛けで実現した。認知度も高まりつつある今、派生して商機が生まれる状況にある。

目指す世界観は「ハッピートライアングル」と髙橋氏は言う。『Cake.jp』をプラットフォームとして、ユーザーに感動を提供し、加盟店に利益を提供する。既にベースはできている。これをもっと強く、大きくするのが今後の展望だ。例えば加盟店に対しては、今は『Cake.jp』を通じた認知度、集客力、商品企画力の向上を図っているが、次は店づくり等リアル店舗へのコンサルティング、支援へとサービスは広がっていくだろう。

誕生日ケーキ等の特別なケーキから手土産品、自分へのご褒美需要等へと領域も広げつつある。さらに進めるには、もっと『Cake.jp』の認知度を上げる必要がある。今後はCM、YouTuberとのタイアップ、リアル店舗への進出といった様々な施策も打ち出していく考えだ。コンビニ、スーパー、駅ビル等のリアルなチャネルにも露出することで認知度を上げ、ECへの還流を狙う。そのためには信用も重要だ。資金面、信用面の両面から、株式上場ももちろん視野に入れている。全ての関係者をハッピーにするために、あらゆる手段を取る。

この展望を実現するために、新たな仲間が必要だ。「ケーキ」はマジックワードだ。社内はこの言葉に魅かれた「いい人」が多い。だが、ゼロから事業をつくってきた人達だけに、芯は強い。これから入る人にも、課題を乗り越える力を求めている。髙橋氏は言う。「スイーツの世界は、市場規模は大きいですが、保守的で何十年と変わっていません。市場を変えようとガツガツやっているのは僕らぐらいですね。業界のマーケットリーダーになるポテンシャルは高いです。でも、その過程ではいろいろな課題が出てきます。成長痛のようなものは多々ありますが、それを一緒に乗り越え、高い山を登りたいと思っています」

ITの会社ながらリアルも扱う手触り感に、さらなるスケールを目指すフェーズも面白い。様々な魅力に溢れた会社だ。