株式会社要

株式会社要は、エンジニアファーストを掲げて、社員と一緒に成長を続けてきたシステム開発会社。SI事業のほかに、自社プロダクトの開発も手掛け、非常にユニークな事業展開を見せている。

自社プロダクト開発を紹介する前に、エンジニアファーストを謳う同社のメイン事業を見ておきたい。システム開発会社としては、同社の事業に大きな特徴はない。SESを含めクライアントワークは、どこのシステム開発会社に所属しても、業務内容は大きく変わるものではない。ただ、同社では、エンジニアファーストを掲げるだけあって、エンジニアがキャリアパスを意識した働き方ができる。

「幅の広い業界・技術の案件を手掛けている当社は、キャリアアップ・キャリアチェンジを志すエンジニアが集まる組織です。エンジニアがキャリアを築ける会社を目指しています。会社都合で案件を押し付けることは極めて少なく、エンジニアが自らの将来に合わせて案件を選んで働けます。時代に合わせてエンジニアの働き方も変わります。技術が古くならないようにキャリアパスをしっかり意識した働き方で、安定的な収入アップを目指してください」（取締役・森川誠氏）。

若手エンジニアが活躍できて、夢を追える会社を目指して、2010年に設立された要。自社エンジニアをアーティストと呼び、ゼロからイチを生み出すモノづくりの精神を大切にしている。

「社員に高い志を持ってもらうために、エンジニアをアーティストと呼んでいます。他のシステム開発会社では、実現できないことをやり遂げたいと願うエンジニアに集まってほしいと考えています。マネジメントや上流工程にチャレンジしたい、新しい言語を習得したい。上のポジションが埋まっていて、キャリアパスが築けない。そんな悩みを持ったエンジニアなら、当社で自分のキャリアを切り開いていけます」（森川氏）。

エンジニアがキャリアを築くためのサポートにも力を入れている。CTOやCPOといった豊富な経験を持つエンジニアに技術的な相談ができ、資格取得のサポートも手厚い。

「当社はエンジニアがキャリアを切り開ける会社です。そのためには、営業もエンジニアを全面的にバックアップします。エンジニア一人ひとりのキャリアを営業が把握し、キャリアアップが望める案件へのアサインを意識して営業活動をしています。会社も一緒にキャリアプランを考えてくれ、それぞれのエンジニアが自分のなりたい姿になれる、そんな会社です」（CTO・松田氏）。

自社エンジニアをアーティストと呼んで、ゼロからイチを生み出すモノづくりの精神を大切にしている、要。SESを含むSI事業を主力とするが、システム開発会社の枠に収まらない事業展開が、実にユニークな会社だ。

自社プロダクトには三つの流れがある。一つは、社会貢献の色合いが濃いプロダクト。例えば、北見工業大学との共同研究で生まれた、道路維持管理のWebアプリ。舗装面の痛み具合を車で走るだけで簡単に計測できる。

「当社は2017年に北海道北見市と連携協定を締結し、オホーツクサテライトを開設し、地域の活性化に取り組んでいます。その流れで、北見工業大学と共同研究を続けています。道路維持管理のWebアプリ『セーフロードV』を2022年にリリース予定です」（森川氏）。

AI監視システムによる託児施設内の環境作りでも、北見市と協力。施設内に設置したビデオカメラの画像をAI識別して、子供同士のトラブルが起きた際に管理者・スタッフへ即時通知し、事後にトラブル個所を速やかに確認するための動画サーチ機能を持つWebアプリを開発して、北見市内の民間こども園にて実証実験を行った。

同社の自社プロダクトのもう一つの流れが「ゲーム」。自社エンジニアの発案で、これまでに数本のゲームを開発している。どれもユニークなゲームで、2019年にリリースした『ALPHA』は、完全一人プレイのかなり難しめなアクションゲーム。一人で戦ってステージを進み、ゲーム内課金は一切なし。現代ゲームのメインストリームともいえる“ソーシャルゲーム”のアンチテーゼのようなゲームだ。

「ザコ敵も強い、BOSSも強い。中間セーブポイントなしで、GAME OVERになったらステージの最初からやり直し。プレイヤーを甘やかさないガチなアクションゲームです。Nintendo SwitchとSteamで配信し、iOS・Androidアプリもあります。『無料プレイからの課金』『ガチャで全てが決まるギャンブル性』『スキマ時間を狙ったライトなゲーム内容』『複数プレイヤーとの同時プレイ』といった特徴を持つソシャゲとは、正反対のアプローチをした異色のゲームです。こんなゲームを開発できる遊び心も、当社の魅力だと思っています」（松田氏）。

同じく2019年に発売した『Pacar Animal』は、オリジナル乙女ゲーム。ただ、インドネシアで販売されているため、ゲーム内は全てインドネシア語。東南アジアのオタク文化先進国インドネシアにスポットを当てた、これまたユニークなビジネスだ。

ユニークなビジネスといえば、おもちゃクリエイター高橋晋平氏とのコラボ作品だ。

2019年にサービス開始した『MouMa（モウマ）』は、高橋晋平氏が発案した「妄想商品マーケット」。19文字以内で好きなアイデアを書き、好きな値段を付けて出品することができるWebアプリ。「こんなのがあったらいいのに」という自由な妄想を、誰にも気兼ねせず世の中に放てる変わり種のサービスだ。

「例えば、『どこにでもワープできる窓：300,000円』といった具合に、文字で書くだけで出品できます。『MouMa』を使えば、誰でも天才発明家の気分を味わえます。値段を付けて出品している以上、当然、それを欲しいと思った人は購入できます。サービス内でのみ使える『妄想通貨』で自由に他人の妄想を買うことができます。ユーザー登録すると最初の所持金1,000万円（妄想通貨）がもらえます」（松田氏）。

クリエイターを中心に『MouMa』のユーザーはじわじわと増えており、同社では『MouMa』を活用した新サービスも開発中だという。

「ビジネスパーソン向けに『MouMa』を活用したサービス『モウトレ』を開発しています。ビジネスのアイデアは、妄想から始まります。妄想からヒット商品やみんなが使うサービスは生まれます。企業向けに『MouMa』を使ったイノベーション研修を提供。イノベーションが生まれる組織のビルドアップ、そのためのコンサルティングのような事業です」（松田氏）。

さらに、同社では、ヒマラヤンコーヒー事業も手掛けている。スペシャルティコーヒー生豆を中心に、紅茶（イラム茶）、はちみつの卸売と小売を展開。ECサイトで販売するほか、2020年には宮城県仙台市にリアル店舗『HM's（ヒマラヤンズ）』もオープンした。

「祖国を愛する当社ネパール人社員の呼び掛けにより立ち上がったプロジェクトです。後進国として課題を抱えるネパールを豊かにしたいという思いに、当社代表が共感しプロジェクトがスタートしました。コーヒー豆の販売だけでなく、農園作りにも寄与すべく、コーヒー農園で収穫された生豆を届けるサービス『Coffee Bean Share』も始めました」（森川氏）。

一見すると、脈絡がないように見える同社の事業。しかし、どれもこれも自社の社員、あるいはパートナーの「やりたい」という気持ちを会社が後押しした結果。メンバーを大事にする心優しき会社、それが要なのだ。