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インタビュー画像代表取締役社長 市村 友一氏 1959年、熊本県生まれ。大学卒業後、1982年に株式会社朝日新聞社入社。主に経済記者として東京、大阪、名古屋、福岡、ニューヨーク等に赴任。週刊誌『AERA』編集長、論説副主幹、執行役員・企画事業担当などを歴任。2021年4月、株式会社朝日新聞出版に移り、6月より代表取締役社長として、DX、IPビジネスの旗を振っている

経済記者、論説委員として活躍してから、出版社の社長になった経緯を教えてください。

特定分野に強い「筆一本」の記者がいますが、私はデスクとして、人の原稿を直したり、取材の指示をしたりするのが面白いと感じていました。経済部デスクとして新聞の1面トップを取るために政治部や社会部といった他部署と競争します。みんなの期待を受けて「1面、取った!」とやるのが楽しかったですね。 一人でできる能力には限界があります。しかし、記者には「この分野には強いけれど、原稿が上手ではない」とか「あまりネタは取ってこないけれど、よく人の話を聞いて問題点を整理するのが巧みだ」と様々なタイプがいます。チームになった時に、より力が発揮できることに醍醐味を感じ、結果的にデスク的な仕事は10年以上務めました。 自分としては、決めごとをするより副官的な仕事が向いていると感じていました。それもあり“上”に行きたいという発想はありませんでしたが、あちこち異動するうちに社長になっていました。最終決断を下す社長という仕事は本当に難しいですね。

2021年に過去最高の売上を達成しましたが、今後、どのような出版社を目指していくのでしょうか?

社長になった時から、世の中の流れから考えて、デジタルシフト、DX(デジタルトランスフォーメーション)は必須だと言っています。加えて、IPビジネス、出版社ではライツビジネスという方が一般的ですが、版権を使い、テレビ化、映画化等をやっていかないと広がらないと考えています。「DX」と「IP」を勝手に繋げて、「DXIP(ディクジップ)」と名付けました。これが今後の経営の柱です。 この一環として、まずオンラインメディア『AERA dot.』をさらに強くする必要があると考えています。そのためには、テック人材を補強し、デジタル領域を強くしていきたいと考えています。 これまで雑誌が果たしていた機能や役割はネット、WEBに置き換わってきています。取材して、発信することを単にデジタル化して置き換えるのではなく、新たな付加価値を創出するビジネスモデルを作っていきたいですね。

先ほどデスクの仕事が好きだったと聞きましたが、どのような仕事観を持っていますか?

正直、あまり考えたことがありません。私は異動、転勤が多かったので、ずっと“出たとこ勝負”でやっています。何か、座右の銘があるわけでもなく、よく言えば、与えられた場で全力を出す、何か自分の成長に繋がるようなことをやりたい、と考えてきただけですね。 40年、仕事をしてきて、色々と「初めてのこと」をやりました。自分が全く想定をしていなかったところに異動し、挑戦することが、今になると面白かったですね。その経験から、自分と合わないものを排除せず、常に関心を持つことが大事だと感じています。 先日、たまたま社員と話していたら、朝日新聞出版は「3ない」だと言われました。これは「威張らない」「いじめない」「独り占めしない」の「3ない」だそうです。自由で明るく、協調している社風が表れていてとても良いと思いました。ここに、異なるものに関心を持つことが加わると、さらにいい会社になっていくと考えています。

趣味等、余暇にしていることがあれば教えてください。

ロックが好きです。洋楽ですね。中学1、2年生の時に「グラムロック」に衝撃を受けてから50年ぐらい聞いています。私達の世代になると、新しいものを聞かないで古い方をどんどん深掘りする人もいますが、私はその時々の新人バンドも聞いています。 特に影響を受けたのは「Led Zeppelin」です。ニューヨーク駐在時代、メンバーのジミー・ペイジとロバート・プラントにインタビューをしました。ジミー・ペイジは私にとって神様なので、ものすごく緊張しましたね。記者としてインタビューした中で一番、緊張したと思います。二人とも、もうLed Zeppelinではなく、民俗音楽系の音も取り入れた新しい音楽を作ると話してくれました。しかし翌日、Madison Square Gardenで聴いたら、ほとんどLed Zeppelinの再現でしたので、どうやって原稿をまとめようかと苦しんだのを覚えています。

社員の皆さんが、今後どのように仕事をし、成長していってほしいと望んでいますか?

当社社員はすごく真面目です。深掘りして、自分の仕事をきちっとやります。望むのは、ちょっと野次馬的に「他の人は何をやっている?」とか「世の中、何か面白いことはないか?」と“わさわさ”してほしいことです。 入山章栄氏が訳した『両利きの経営』(東洋経済新報社)に一つのものを深掘りする「知の深化」と、さらに「知の探索」の両方ができて初めて、会社は上手くいき成長すると記されています。これでいうと、当社社員はもっと探索することが必要だと感じています。 そこで、野次馬根性がもっと発揮できるような職場作りをしたいと思っています。言い替えると、社内の情報流通や情報共有をより活性化させたいのです。異質なものに接しないとイノベーションは起きません。“違うこと”に対する興味や関心、接点を持ってもらうことが大事だと考えています。 時々、思い切って息抜きしたり、違う駅で降りて帰り道を変えてみたりしては? とも言いたいですね。

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