株式会社AliveCast

福岡を拠点に、Webサイト制作とアプリ開発を手掛ける株式会社AliveCast（アライブキャスト）。クリエイティブを含めたシステム構築の技術力と、実践的なマーケティングスキルを兼ね備えている点が特徴だ。
ECサイトの制作案件を例にとれば、クライアントへの綿密なヒアリングに基づいてターゲット、サイトで達成すべきゴール、そして目標達成をアシストする差別化ポイントを設定。事前準備を十分に重ねた上でサイトコンセプトを決定し、ようやく実作に着手する。サイト稼働後も優位性確保に向けた提案を重ねていくことは言うまでもない。このように、提案から運用まで総合的に担える対応力で支持を広げ、コーポレートサイトやECサイトを中心に、同社がサイト構築を手掛けた企業は200社を超えている。官公庁や銀行からメーカー、通販、量販店等、クライアントの業種も幅広い。

「社員全員、エンジニアやクリエイターであると同時にマーケッターでもあります。言ってみれば、マーケティングスキルを備えた技術者集団。ツール開発も手掛けるコンサルと言い換えてもいいでしょう。ワンストップで期待に応えられる対応力が、当社の一番の強みです」と話すのは、代表の中村理氏。

対応力のベースとなるのは技術力だ。自社開発のCMSの拡張版であるWeb Site Management System『WMS』も、セキュリティも強固で手軽に機能追加ができる使い勝手の良さで顧客の高評価を得ている。
また、マーケティング力の証であるベンチャー所以の自社プロダクトの開発にも力を入れている。その一つ、QR注文・決済アプリ『ExOrder（エクスオーダー）』は、「ペイ」よりも「オーダー」に重きを置いた画期的な機能で注目を集め、福岡の地元メディアにもしばしば紹介される話題のプロダクトだ。
「カタログや店舗に掲示されたポスターのQRコードをスマホで読み取ることで、商品やサービスの提供、支払い、配送まで一瞬で完結できるアプリです。現金支払いはもちろん、ECサイトにつきもののIDやPWも不要。リアルとバーチャルの中間に位置するサービスと考えればイメージしやすいでしょう」と中村氏。
電子チケットや飲食等、対応領域の広い『ExOrder』は大手GMSをはじめ地場の焼き鳥店チェーン等、幅広い業種に着実に支持を広げ、導入企業は既に100社を超えている。最近では、『ExOrder』の技術をベースに、デジタルサイネージシステムを用いて無人店舗や遠隔接客の実現を目指す実証実験も佳境に入っている。

「現状、自社プロダクトの売上は全体の4割。今後はWeb制作の実績を着実に広げつつ、近い将来に自社開発アプリの売上比率を8割まで高めていく方針です」（中村氏）。

同社の設立は2005年。大手電機メーカーで半導体装置開発や商品企画に携わっていた中村氏が「自分の力で新しいビジネスモデルを生み出したい」と一念発起し、福岡市のインキュベート施設で創業した。当初は企業とコーチングスタッフを繋げるマッチングサイトを手掛けていたが、事業の主力を徐々にホームページ制作に移行。「企画もできるエンジニア」という持ち前のスキルを生かし、マーケティングに力点を置く現在の制作スタイルを確立した。
「当社の理念は、“自ら動こう、人生のハンドルを握ろう”という自走マインドと、“未来を予測することはできないが、未来を創ることはできる”というイノベーティブなベンチャー精神です」と中村氏。社員10人に満たない少数精鋭の同社が広範なクライアントの信頼を集める“大きな仕事”ができるのは、この基本姿勢あればこそ。積極的にビジネスコンテストに挑み、官民を問わずアライアンスやコラボレーションを広げる開発スタイルも、現状のパワーを何倍にも膨らませるレバレッジとして機能している。その来歴の一部を紹介しよう。

2013年　九州ニュービジネス優秀賞
2015年　フクオカベンチャーマーケット大賞　優秀賞
2017年　第17回MIT-VFJビジネスコンテスト　正会員特別賞
2018年　AEON Financial Service Innovation 特別賞
2018年　JTB　Travel・FinTech2018　最優秀賞
2019年　Plug and Play Japan Batch2　採択

ちなみに、前出のデジタルサイネージを用いた実証実験も、経産省の「新連携事業」認定を受けたパブリックなチャレンジであり、十分な資金サポートを得て進めている。

イノベーティブなベンチャーマインドとは別に、同社の事業を力強く前に進めるモチベーションとなっているのが、社会貢献を重視する姿勢だ。
「創業以来、ECサイトを数多く制作する中で、地方の高齢者等『買い物したくても店が遠い、かといってPCやスマホの操作は苦手』という人が思いのほか多いことに気付き、自分達の技術で何とか手助けできないか…と。『ExOrder』は、そんな“買い物弱者支援”の発想からスタートしたプロダクトです。このような地方の高齢化がもたらす諸問題に限らず、貧困やフードロス等、今の世の中には解決すべき社会問題が沢山あります。今後も、そうした問題解決の一助となり、社会貢献に繋がる仕事がしたいと考えています。どんなに画期的な機能を開発しても、自己満足では意味がありませんから」と中村氏。同社の事業姿勢には、創業16年を経て少しも揺るがない真摯なベンチャーマインドが息づいている。

社内環境、例えば職種の定義にも、イノベーションを重視する同社らしさが表れている。
「システム開発を担うエンジニアの職種名は、ハッカー。マーケティングを知っている技術者の位置付けで、仕事は開発の最上流、最初のヒアリング段階でプランナーと客先に出向いて課題と要望を聞くところから始まります。日本ではなじみが薄い呼び名ですが、シリコンバレーでは今や誰もプログラマーとは呼んでいないようです」（中村氏）。

同様に、WebやアプリのUI/UXを担うデザイナーは「クリエイター」、内勤で事務作業をはじめ多様なサポート業務を行うアシスタントは「エージェント」と呼ばれる。職種を問わずクライアントとの交渉業務は必須で、自身の専門領域とは別に、実務経験を積むうちに自然とマーケティングスキルが磨かれる。どの職種にも、デザインをするだけ、コードを書くだけといったスタイルでは得られない俯瞰的な視野と、確かな成長実感が伴うのは言うまでもない。

社員の成長を担保する教育研修制度も特徴的だ。毎日実施される「学習プレゼンテーション」もその一例。これは一人の社員が自分が決めたテーマに沿って発表し、全員で議論を深めていく勉強会で、テーマは「アプリ開発」「睡眠時間と業務効率の因果関係」等、仕事に役立つものであれば、なんでも自由に設定できる。少なくとも2週に1度はプレゼンテーター役が回ってくるので、主体的な学習意欲が自然と刺激され、いつの間にか定着する。オフィスには会社が購入した書籍や社員が持ち寄った書籍を集めた図書コーナーもあり、個々の自己研鑽を助けている。また外部のハッカソンやカンファレンスにも自己申告で参加でき、必要な費用も支給される。資料や書籍の購入、資格取得についても同様だ。

残業は原則禁止、土日連休の完全週休2日制等、ワークライフバランスも良好だ。ライフスタイルに応じてリモートワークや短時間正社員といった働き方にも柔軟に対応。結婚を機に他県に転居し、そのままテレワークで結婚前と同様の働き方を続けているクリエイターもいる。また1泊2日で全員参加のキャンプを行う等、親睦の機会も多い。ちなみにこのキャンプは平日に行われ、勤務時間にカウントされる。近年は中断しているが、コロナの状況が落ち着けば再開する意向だという。そのほか2日間の失恋休暇等、同社らしい個性的な福利厚生制度は枚挙にいとまがないほどだ。

気心の知れた仲間達と一緒に、世の中に役立つ新しい価値創造に挑む日々。確かな達成感が得られる環境が、ここにある。