株式会社AGE technologies

2018年に設立された株式会社AGE technologiesは、煩雑な相続手続きをテクノロジーによって効率化するWebサービス『そうぞくドットコム』を開発・提供するスタートアップベンチャー。

親類が亡くなり資産を相続する際、戸籍謄本等の書類を集め、相続申請の書類を作成し、役所に提出する必要がある。専門知識も必要で、かなり煩雑な作業だ。。AGE technologiesの『そうぞくドットコム不動産』は、それをネットで簡単に手続きができる、エイジテック分野のサービスなのだ。2020年のサービスの正式リリース以降、累計の登記不動産件数は既に3万件(2024年1月時点)を超えている。

「相続に伴う不動産の名義変更に特化したサービスです。申請者本人が自分で書類作成と申請をするアシストをするウェブサービスです」（代表取締役CEO・塩原優太氏）。

同社のサービスは、書類を集めから役所に提出するまでを、郵送代行や専用システムの提供などによってサポートする。業務フローのポイントとなる部分にテクノロジーを導入して、効率的なフローを実現しコスト削減。

不動産の相続手続きを効率化する「そうぞくドットコム不動産」は、不動産の数、相続人の数に関わらず、一律85,000円（税別）の価格て提供している。一律料金によって、”明朗会形”を実現している点も魅力的だ。

「テックによって、効率化し、原価を圧縮する。それによって低価格でのサービス提供が実現します。また”人生で数回しら起こらないイベント”という点で、情報の非対称性が非常に大きい。だからこそ”一律料金での明朗会計”でお客様に安心してご利用いただけるサービスを目指しています。」（塩原氏）。

エイジテック分野において、まずは「相続手続き」のテクノロジー化に着目した株式会社AGE technologies。塩原氏の前職での経験が、事業を立ち上げるきっかけとなった。

「前職で、中小企業経営者の相続や事業承継に関するコンサルティング業務を行なっておりました。トラブルなくスムーズに後継者へ会社や個人の財産を承継するためのお手伝いです。事業承継はケースがまちまちで多くの専門家や金融機関と連携し、その人にあった最適なソリューションをオーダーメイドで提供する必要があります。そのため、どうしても労働集約になるものです。一方で、課題を抽象化して、一般の方にフォーカスしたところ手続きは煩雑だが、ケースは集約できる。テックによって暗黙知を形式知化すれば、「ネットで相続手続き」という新しい市場を生み出せると考えました。誰でも簡単に相続手続きができるようにしようと考えたのが起業した理由です」（塩原氏）。

AGE technologiesでは、相続に関するノウハウを集めたWebメディア『そうぞくドットコムマガジン』も運営している。相続だけに限らず、葬儀やお墓、生前対策や終活、亡くなった後の役所手続き、遺産分割、相続財産の売却や運用等、ライフエンディングに関わる様々な知識やノウハウを配信する無料のWebマガジン。司法書士、税理士等の専門家監修の下で良質な記事を提供している。

「Webメディアの運営の目的は、端的に申し上げると『そうぞくドットコム』の認知拡大です。たいていの場合、普段の生活の中で相続を意識することは少ないと思います。ライフエンディング全般に関する情報を提供し、”終活”や”相続”に興味を持ったユーザーの目に触れることで、いざ時が訪れた際に真っ先に『そうぞくドットコム』を思い出していただけるような状態を目指しています」（塩原氏）。

2021年4月に不動産相続手続きを義務化する法案が国会で可決。2024年4月には、遂に相続登記が義務化。不動産を相続した方は3年以内に名義変更を済ませないと、今後は罰則の対象にもなる。この法改正は、同社の『そうぞくドットコム不動産』に追い風を吹かせた。

「これまでは名義変更を放置しても罰則等が無かったため、相続手続きができていない空き家や空き地が日本中にたくさん増えました。治安の問題や、有給資産の活用の観点から国や自治体も頭を抱えていました。そこで、相続手続を義務化し、相続のタイミングできちんと名義変更を済ませることで、空き家、空き地を無くし、不動産を正しく管理・活用することを目指す、という流れになっています。実際に”手続きの義務化”を知っての問い合わせも増えており、弊社事業も数年前の見立てを超えて、速いペースでのスケールを見込んでいます」（塩原氏）。

不動産相続に特化したサービスを提供しているAGE technologiesだが、『そうぞくドットコム』は、同社が考える「AgeTech（エイジテック）」の最初の一歩に過ぎない。

「エイジテックと呼ばれる高齢社会の課題解決のためのテクノロジー分野を、中長期的に当社が取り組むマーケットとして捉えています。エイジテックは金融、住宅、医療、生活・サービス等、複数の事業ドメインから構成され、高齢者だけでなく、その家族等、世代を超えた人々や地域社会によって成り立つ分野。まずはDXによるインパクトが最も大きい『相続手続き』において、テクノロジーを通じた、新たな選択肢の提示を行います」（塩原氏）。

エイジテック領域では、幅広い事業ドメインが対象となるため、今後の同社の事業展開は多岐にわたると予想される。テクノロジーによる社会課題の解決を仕事にしたいエンジニアにとって格好のフィールドがAGE technologiesにはある。

「日本の高齢化率は29%を超え世界でも1位。四人に一人が65歳以上という“超”高齢社会へと突入しています。2023年には新たなミッション『資産と想いを次世代につなぎ、日本の可能性をひらいていく。』を掲げました。少子化と人口減少が同時に加速する日本において、世代を越えた最適な意思決定をサポートし、資産と想いを次世代に引き継いでいく、それが、AGE technologies の使命です。まずは相続手続きのデジタル化から入り、資産と想いの最適な意思決定を支援していく。この動きは、中長期では「経済の活性化(≒循環)」につながると考えています。これが超高齢社会に突入した日本社会を、ネガティブではなく、オープンで明るい社会に変えていく1つの道筋だと捉えており、AGE technologies はその社会実現に向けて突き進みます。」（塩原氏）。

2024年現在、16名（業務委託を含む）でサービスを運営している。2023年以降、「少数組織」で生産性高く働く組織へと、経営の舵切りを行ったようだ。

「会社は7期目に突入しました。マーケット環境もあり、組織の筋肉質化を求められ、2023年は大きな改革を行いました。結果、現在では事業も黒字化し、非常に良い状態で次のフェーズへ進もうとしています。今後も過剰投資はする予定はありませんが、新規事業を含めて複数のポジションが生まれつつあり、適切な投資を行なっていく予定です。まさに第二創業期、といったイメージです。」（塩原氏）。

創業者の塩原氏は、事業を作るのではなく、会社・組織作りを作りたくて起業したという。「全員が、事業や会社に対して”当事者意識を高く持って働ける”、そんな会社を創ろう」が塩原氏の口癖なのだ。

「私自身初めて起業するので、失敗は付きものです。失敗したら、素直に認め、反省し、次に活かせば良いのです。そうやってメンバーみんなで『良い会社・事業』を作り上げていきたいです。『こんな制度どうですか？』『うちの会社ではこんなことをやっていました』という意見は大歓迎です。現状で満足しきれていない、次の挑戦がしたい方のご応募をお待ちしております。」（塩原氏）。