業務管理システム向けSPAを高生産性で実現する独自フレームワーク「RP Framework」を用いてWebシステム開発。
滋賀県草津市にある株式会社レッドペンギンは、大手企業のICTコンサルティングからシステム開発、運行支援まで幅広く手掛けるシステム開発会社。基幹業務システムでは、クラウド・オンプレミス、C/S・Web・スマートデバイスなど多様な形態に対応している。中でも自社開発のSPAを実現するフレームワークを用いたWebシステムに定評があり、痒いところに手が届く操作性のユーザーインタフェースを実現し、実際のシステム利用者から圧倒的な支持を受けている。
「経営陣や情報システム部が考えるITと、現場でシステムを使うスタッフとでは、システム導入の考え方で大きな開きがあります。基幹システムにデータを入力する経理や労務、総務、販売管理などの部署では、スムーズに入力できるのが大前提ですが、実際のWebシステムでは画面遷移などの問題で入力時にストレスを感じることもあります。当社は現場で入力する人々のことを考えて、独自フレームワークを使って部品コンポーネントを作成し、Webシステムだからを居力排除したシステムを開発します」(代表取締役・風呂井 仁)
Webブラウザで動作するアプリでありながら、サブミットなどのページ遷移がないC/Sシステムの動きを実現するソフトウェアフレームワークである「RP Framework」を独自に開発し、これを使って高速・高品質なソフトウェアの開発を実現している。
「当社が作ったWebアプリケーション開発用フレームワークの部品コンポーネントであるSPA Libraryによって、Webアプリケーションで基幹業務システムを構築することが可能となります。例えば、ページング機能を利用せず10万件のデータを表示しスムーズに編集可能、Enter移動、キーボードのショートカット利用、伝票入力で要求の多いキーボード操作による高速入力、などを実現しています。初めて見た利用者様が、デスクトップアプリケーションと見間違えるほどです」(風呂井氏)
SPAなどのフロントの技術を駆使すれば、Webアプリでもデスクトップアプリと同レベルの操作性の使いやすい基幹業務システムを構築することが可能です。Webアプリの管理面での優位性を保ったまま、デスクトップアプリケーション並みの機能性を実現可能です。さらに、自社サービスから請負開発まで独自フレームワークを利用することで、各プロジェクトの経験を個人から組織のものとし、ソフトウェアの品質を高く保ち、スピーディな開発も実現しています。
Microsoftの技術を積極的に採用。高い技術力で大手企業からのプライム案件を受託
レッドペンギンでは、開発基盤・ツールとしてMicrosoft製品を積極的に採用している。クラウド、開発環境、Officeと幅広い製品を容易に連携させることで、利用者の幅広い要求へ対応している。
例えば、対話型データ視覚化BIツールであるMicrosoftの「Power BI」を利用し、開発したシステムのデータを利用する経営コクピットなどのモニタリング機能を構築する、など必要に応じてMicrosoft製品を利用することで、顧客要求を実現している。
「少数精鋭の小さな組織ですが、取引先には大手企業も多く、さらにプライムでの受注もあります。プライム以外の案件も多くの案件で要求分析や業務設計といった超上流工程から参画しています。さらにコンサルティング、PM・PMO支援といった管理業務まで幅広い業務を請け負っています。技術から業務、管理面まで一社でまかなえることから、MR/AR ( Microsoft Hololens )を利用した未来の業務システムを実現する、といった開発案件もご依頼いただいています」(風呂井氏)
技術力の向上には自ら進んで技術に触れる必要があるため、レッドペンギンでは積極的に社員の提案を採用している。前述のHololensの採用は社員のやりたい、という希望を実現したものだ。さらに、今後ブロックチェーン技術を利用した案件を予定している。
「RP Dump Browser for Oracle」というソフトウェア製品を提供している。このソフトウェアは、OracleデータベースのDumpファイルを直接閲覧・確認し、編集したり他形式や他DBへ出力できるソフトウェアである。非常にニッチなサービスだが、一部のエンジニアに強く支持されている。
「もともと当社のスタッフが個人の趣味で作っていたものです。商品化を望む声がありましたが個人でサポートしていくことが難しいため会社の製品として提供して欲しい、という社員の希望に沿い提供することにしました。自分で作ったシステムを世の中に提供していきたいという要求に応えることが他メンバーが自分からやりたいことのきっかけになれば、と考えました」(風呂井氏)
「当社はシステム開発の会社として技術力も重視していますが、必ずしも入社時点で高いスキルは求めていません。特に自社フレームワークを利用しているため入社後に覚えられます。それよりも、仲間のため、お客様のため、自分以外の他人のために働くことが好きなエンジニアと切磋琢磨して、共に成長を目指したいと考えています」(風呂井氏)
使い勝手のよいシステムを開発。Webアプリで業務システムを提供する自社サービス
代表取締役である風呂井氏は、大学院で生産管理などの研究を行い、その後システムエンジニアとなった。ITベンチャーにヘッドハンティングされ大手企業向けのプロジェクトのマネージャや、システムアーキテクトを中心に担当した。その後、フリーランスとして独立したのちに、レッドペンギンを設立した。
「自動化やAIの時代には、多くのシステムをAIが開発することになる。そのためにはユーザーインタフェース、ソフトウェア構造、データベース構造、開発プロセスなどの徹底して標準化・共通化が必要になる。標準化・共通化が進んだときシステム開発は新しい形態になる。この新しい形のシステム開発の恩恵を、より多くの企業に提供するためにはしがらみが多い既存の組織ではない新しい組織が必要になる、と考え起業しました。滋賀県産業支援プラザの支援を受け、草津のSOHOオフィスで立ち上がったレッドペンギンは、滋賀県の新しいIT企業として高い期待を受けています」(風呂井氏)
風呂井氏が培った経験を生かして働くなら、フリーランスでも十分だったが、この新しいシステム開発の追求と実現には同じ価値観を持った仲間と進める必要があった。
「今は、自社フレームワークや自社開発プロセスを通して、受託開発に適用しています。しかし、レッドペンギンは最終的にこの新しいシステム開発の形態を自社サービスとして提供するために立ち上た企業です。現在、この考えを適用したクラウドサービスを開発中です。その後もいくつもサービスの提供を予定しています。今後は、クラウドサービスを通した共通的なサービスの提供と、お客様毎の要求にこたえる請負開発事業を進めます」(風呂井氏)
レッドペンギンが考えている自社サービスは、BtoCではなくBtoB。クラウドとWebアプリケーションで開発した業務システムを提供する計画だ。
「自社サービスは、最初、小さな企業であることを生かしニッチな業界・分野向けのサービスを考えています。例えば、特定経済団体向けの会員管理や、伝統業界向けの生産販売管理といった分野です。競争相手が少ないことと業界のIT化が求められている業界・分野です。ニッチな業界では専用のパッケージが少ないため、現場での使い勝手を重視することで他社のサービスと差別化することができます」(風呂井氏)
受託開発で培った技術を蓄積して、システム開発の手法を徹底的に標準化・共通化し、ニッチな業界・分野向けの業務システムを開発して提供する。レッドペンギンのビジネス戦略は視界良好だ。