オーベン株式会社

オーベン株式会社（Oben Inc.）は、医療情報サイトの運営をはじめ、ウェブライブデモンストレーションサービスの提供やメディカル映像の制作、メディカルライティングなどをおこなっている会社だ。とりわけ、繊細で高度な技術が求められる脳神経外科分野においてはトップクラスのコンテンツを保有・提供しており、ニッチな業界で、トップクラスの位置づけにある。設立は2007年7月で、東京都港区南青山に本社がある。

オーベンが提供するサービスは、手術のライブ動画やハンズオンセミナーなど、動画をベースにした配信サービスだ。主な顧客は医療機関、医療機器メーカー、製薬企業などで、有料会員からの会費や、医療機器メーカーや製薬企業などから依頼を受けた動画制作受託費が、主な収入源となっている。安定したコンテンツ配信により売上高は順調に推移しており、新型コロナウィルスの影響もあって会員数は増加している。

オーベンの強みは、次の3点に要約できるだろう。1つは全国トップレベルの医師との、広範なネットワークだ。中でも医師の手元とモニター画面をズレなく連動させる高度な編集技術は、実際に手術をおこなうための教材として、経験の浅い若手医師を中心に高く評価されている。2つ目は医療機器メーカーや製薬会社とのネットワークで、オーベンにとっても各メーカーにとっても、さまざまな事業機会をもたらすヒントを提供してくれる。3つ目は企画力で、.医師や各メーカーとの固い信頼関係により、ニーズを的確に吸い上げた企画を映像化できる。

代表取締役を務める武臣ゆみ氏は、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社に在籍中、多くの患者が信頼できる医師と出会い、治療に前向きに取り組むようになった姿を見てきた。「優秀な医師と、より多くの患者さんをつなげたい」と考えた武臣氏は、早稲田大学大学院経営学修士でMBAを取得。患者が安心できる医療情報を提供することを目的に、医師の技術継承のためのサイト「Oben」を立ち上げた。

「Oben」は進化を続け、現在は医師による手技映像の配信をはじめ、さまざまな「学びの場」を提供する総合サービスに成長した。

「Oben.jp」は熟練医師の「匠の技」を可視化し、共有する動画プラットフォームだ。「持っている技術を次世代へ伝えたい」、「最新の手法を幅広く学びたい」といったニーズに応え、手技の感覚を視覚や聴覚を通じて追体験できる。若手医師にとっては、熟練医師の技術を横断的に学んだり、最新治療について語り合ったり、日々の臨床にすぐ活用できる「学びの場」となっている。

直近のケースでは、遠隔での診療サポートおこなう株式会社T-ICUと共同で、「人工呼吸器の扱い方ビデオ」を作成した。講義編と実技編があり、経験を積んだ医師や看護師が、わかりやすく解説している。

「Oben Web Live」は、会場や施設の中だけで開催されていたワークショップやライブデモンストレーションをオープンにするウェブサービスだ。「学べる場を増やす」を目的とし、日本国内だけでなく、世界中の参加者とインタラクティブに討論やコミュニケーションができる。

「Oben Writing」は、専門性の高い講演や治療シーンの音声を文字起こしするサービスだ。英語にも対応し、起こした文章を構成し直して、配布用資料や冊子にするサービスも請け負っている。

「いいお医者さんネット」は、医師が患者に向けて治療法や医療情報を語るサイト。「患者が望む形で必要な情報を的確に伝えたい」という願いをもとに、医師が自らの言葉で情報を発信する（月間アクセスは50万PV以上）。

今後のオーベンは、引き続きニーズが高い企画を、スピード感をもって提供していく。「オーベンならきっとできるだろう」という信頼感、期待感も高く、医師や取引先からさまざまな案件や提案が舞い込んでいる。この期待に応えるため、オーベンは自社配信システムを一から構築する計画だ。より多様な機能を搭載すると同時に、操作性向上を目指し、ウェブサイトの再構築も検討している。

メンバーは全員が中途入社で、平均年齢は30代後半。男女比は1：2の比率となっている。組織はフラットで、お互いの得意分野を活かした協働体制が組織の特徴だ。社内は落ち着いた雰囲気で、全員が「医療技術の前進に、当社にしかできない方法で貢献している」という誇りをもって働いている。

オーベンは、「やる価値のあることなら、できる方法を考えて、すぐに動く」ことを大切にしている。社長との距離も近く、さまざまな意見を発信して形にできる。働き方は、個々のメンバーのライフスタイルを尊重して柔軟に働けるよう、自由度の高い裁量労働制を導入している。

教育制度は、社内レクチャーや外部セミナーへの参加支援制度などがある。主な福利厚生は、各種社会保険完備はもちろん、フレックスタイム（コアタイムあり）、時短正社員制度、リフレッシュ休暇など。社内行事は歓送迎会、忘年会、誕生日会などが開かれ、毎回ほぼ全員が参加する。

今回の採用では、性別は問わず、システムの体系的な知識・経験をもつ人材を求めている。特にホームページ制作やウェブ配信分野での経験者は歓迎される。中途入社者の前職を挙げると、大手外資系医療機器メーカー、大手映像会社（映像制作）、大手銀行（マーケティング）、外資系金融機関（法人営業）、書籍編集者、といった例がある。育児や海外転勤を機に離職し、オーベンでセカンドキャリアをスタートさせたベテランも複数在籍している。求める人物像は、より良いものを目指して柔軟にアイディアを出せる人、一からルールや枠組みをつくることに前向きな人、そして、まず手を動かせる人だ。

オーベンでは、医師や医療機器メーカーと協働し、自分のアイディアや企画を実現できる。普段は触れる機会がない医師たちの「匠の技」をつぶさにとらえ、それを後学のために残すという取り組みも、大きな意義があるだろう。「一から一緒に考えてつくっていく」という新しいものへの挑戦心も、オーベンの大きな魅力だ。