マルチデバイス・キャリアフリーのMDMサービスで、ワークスタイルを変革する
株式会社アイキューブドシステムは、法人におけるモバイルデバイスの活用を包括的に支援するプラットフォーム「CLOMO」を開発・提供する企業である。
CLOMOとは、情報漏洩対策、セキュリティ管理、汎用ルールの適用、使用状態の監視など、モバイルデバイス導入に際して必要となるEMM(エンタープライズモビリティ管理)の機能を広く網羅したB2B SaaSサービスだ。
OSやキャリアを選ばないマルチデバイス・キャリアフリーの強みと相まって、大規模運用ユーザーを中心に、金融、建設、ITなど業種を問わず全国2000社の法人に導入されている。一般企業のみならず官公庁や医療機関、教育機関の導入事例も多い。
ここでCLOMOが支持を広げた経緯を見てみよう。
同社は設立10年目にあたる2011年、国内初のiOS向けMDM(モバイルデバイス管理)サービスとしてCLOMOをリリース。以後、企業が自社の業務最適化にスマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスを活用する流れが加速する中で、徐々に機能の充実を図りながら順調にユーザーを拡大。黎明期にあった国内MDM市場においてローンチ初年度から早くもトップシェアに立ち、以後MDMベンダーが急速に増える中でも着実に存在感を高め、10年連続で首位を独走している(ミック経済研究所「ミックITリポート2020年1月号」による)。そして、2020年に東証マザーズに上場した。
CLOMOが「モバイルワークのインフラ」として選ばれ続ける理由は何か。同社管理本部長の山田泰裕氏は「B2B」をキーワードに挙げる。
「代表の佐々木勉が27歳で当社を設立して最初の約10年は受託開発がメインでした。代表自らプロジェクトマネージャーやシステムエンジニアとして開発の最前線に立ち、システム導入や導入後の運用、セキュリティについての相談に対応するうちに、企業の生産性向上にインターネットサービスを使ってもっと貢献できると感じていました。同じころ、急速に普及したモバイルデバイスに着目し、OSとデバイスに縛られないクラウドサービスの開発に着手。これがCLOMOの開発につながりました」
山田氏の話から、SIerとして築いたB2B領域の豊富なソリューション実績が同社の開発力を支える強固な土台となっていることがうかがえる。MDMベンダーでは導入後のサポートを外部に委託する企業も少なくないが、同社は社内のカスタマーサクセスチームがすべて対応する。9年間の手厚いサポートで築いた膨大なノウハウも、競合を寄せ付けない競争力の一端を担っている。
2017年にサービスインしたアプリケーション「ワーク・スマート」も、企業ニーズに即応する同社らしい開発事例。設定に応じて業務時間外モードに自動的に移行し、隠れ残業を未然に防ぐ新機能だ。働き方改革に積極的に取り組む大手を中心に導入企業が広がっている。
Microsoft、Google、Apple、とのパートナーシップを活かして
同社の技術力を語るうえで見逃せないのが、MicrosoftやGoogle、Appleといった業界メジャーとの強い関係性だ。Google Inc.から日本では当時数少なかったGoogle Enterprise Partnerの認定を受け、AppleからはiOS向けMDMに関して早くから限定仕様公開を受けたほか、Microsoft Azureの活用において2016年度のマイクロソフトパートナーオブザイヤーOpenSource on Azure部門最優秀賞を受賞している。
日本のMDM市場をリードする存在とはいえ、福岡に拠点を置く同社がなぜ、世界のIT業界を牽引する企業群とこれほど強い関係を築くことができたのか。それについて、山田氏が興味深いエピソードを明かしてくれた。
「CLOMO開発に先立つ2005年ごろ、代表がシリコンバレーのGoogle本社を視察する機会がありました。そこで現場のエンジニアから聞いた『自社開発のサービスで、2年で世界一になりました』という言葉に大いに刺激を受け、まずGoogle Apps関連の開発に乗り出したことが、自社プロダクト開発にシフトする転機になったようです」(山田氏)
ほどなくして、当時急速に普及が進んでいたスマートデバイスと、クラウドという新たな技術領域にいち早く着目。「モバイルとクラウドの技術を生かして企業の生産性向上に貢献し、ワークスタイルを変革する」という、目指すべき企業ミッションが明確になって、今日に至っている。
同社のスタッフは役員を含めて75名(2020年3月現在)、その多くが中途入社のスタッフだ。そのバックボーンも、ユーザー企業やパートナー企業の顔ぶれに負けないくらい豪華かつ多彩である。
「OSメーカーやB2BSaaSの国内トップ企業、大手家電メーカー、SIerなどのほか、前職はレストランのコックだったエンジニアもいます」(山田氏)
中途入社社員には九州出身で首都圏や関西でエンジニアとしてキャリアを積んだ後に当社に転職したUIターン社員が目立つ一方、福岡や九州とは縁もゆかりもないが、あえて当社を選んだという社員も少なくない。
「志望動機を聞くと、異口同音に『B2B領域で先進的な開発に携われる企業は、なかなかないから』という答えが返ってきます。あらためて、当社の強みを教えられる思いです」(山田氏)
また同社には女性スタッフや外国人のエンジニアが多数、在籍している。女性社員比率は3割を超え、中国、韓国、フィリピンなど、外国人スタッフも約1割を占める。この多様性も同社の大きな特徴といえる。
「ダイバーシティは社内で重点的に取り組んでいるテーマのひとつです。開発現場はエンジニアファーストの自由な空気に満ちていて、それはもちろんいいことなのですが、自由度が高い組織ほど、慣れというのか、合理的とは言えない緩みを伴いがち。ところが、外国人エンジニアの『どうしてそんなことを?』の一言で空気が締まり、現場が活気を取り戻す場面が実際にありました。また今後はお客さまに女性の担当者も増えることが予想されますから、開発が男性の視点に偏らないよう、女性エンジニアの力はとても重要だと考えています」(山田氏)
一人ひとりの個性と多様性を尊重し、生き方を支える福利厚生制度
同社のオフィスは福岡と東京の2拠点体制。ユーザーの多くが東京本社の大手ということもあり、販売代理店支援を担うビジネスチームは東京に所属し、福岡本社には開発チームとカスタマーサクセスチーム、管理部門などが籍を置いている。
開発チームはクラウド、スマートデバイス、アプリケーションのすべてが統合された次世代IT環境の実現に向け、それぞれの開発テーマに挑んでいる。サーバーサイド開発ではRuby/Ruby on Rails、モバイルアプリ開発にはXamarinを採用し、インフラにはAzureを利用。CLOMOの本番環境はKubernetes上で構成され、開発はコンテナ上で行われている。今後もクラウド、モバイル、ソーシャル、IoT領域を軸に、最新のテクノロジーを生かしたソリューションをユーザーに届けていく方針だ。
エンジニアのスキルアップも多面的にサポートしている。国内の技術カンファレンスはもちろん、Microsoft Build、Apple社のWWDC、GoogleI/Oなどの海外カンファレンスにも業務扱いで積極的に参加。また定期的に社内エンジニアによる勉強会やハッカソンイベントを開催し、最新の技術トピックをキャッチアップしている。当然のことながら、業務に関係する技術文献であれば、経費で購入できる。4kディスプレイと最上級ワークチェアを全員に貸与するなど、開発環境もすこぶる快適だ。
手厚い福利厚生制度も同社の大きな魅力だ。完全週休二日制はもちろんのこと、勤務はコアタイムなしのフルフレックス制。何より、ワークスタイル変革を推進する企業らしく、残業は平均月10時間以下を長くキープしている。
「自社プロダクトの強化を軸とする当社の開発スタイルは、長距離走にも似たロングテールのワークスタイルです。無理をすると続かないので、1日8時間で最大の成果が上げられる業務量になる仕組みを数年がかりで確立しました」(山田氏)
社員の6割近くが所帯を持つ。子育てやスキルアップなど、事情に応じてリモートワークや時短勤務が認められているのも、社員にはうれしい配慮だ。1か月間、海外に飛んで英語を勉強しながらリモートワークを続けたエンジニアもいる。
「仕事とプライベートのメリハリをつけて、好きなことに打ち込む社員も多いですね。暇さえあれば海外に行くという人もいれば、私のように仕事が趣味という社員も。代表は近年、ロッククライミングやゴルフに熱中しているようです」(山田氏)
多様なバックボーンを持つエンジニアたちが、安定したペースで自分の開発テーマに挑む同社。無我夢中でスキルを磨くフェーズを終え、そろそろ確かなキャリアを築き上げたいと考えるエンジニアにとっては間違いなく、検討に値する選択肢となるだろう。