株式会社ムラウチドットコム

株式会社ムラウチドットコムには、2本の事業の柱がある。ブログを中心としたWebメディア事業と、自社ECサイトの運営も含めたEコマース事業だ。

Webメディア事業の中核を成すサービス「にほんブログ村」はブログのポータルサイト。アメーバブログやFC2ブログ、楽天ブログ、はてなブログなど、ブログサービスは世の中にたくさんあるが、「にほんブログ村」は、いろんなサービスのブログを横断的に集めた無料のサービスだ。

「ブログを運営している人にとっては、アクセス数を増やすための方法となり、ブログの読者にとっては、気になる情報や調べたいことを検索できるサービスです。有名人でもない限り、ブログ開設当初は『ブログを書いたのにどこからもアクセスがない』といった事態は当たり前。にほんブログ村には、新着サイト・新着記事のランキングや約11,000件のカテゴリと約46,000件のテーマがあるため、すぐにアクセスを集めることができます」（代表取締役・村内伸弘）

独自のポイントシステムを採用し、ランキングバナーを押すと入る「INポイント」、ブログ村に貼ってある自分のブログリンクがクリックされたら入る「OUTポイント」、見てくれた人が多くなると入る「PVポイント」、3種類のポイントでポイント数を獲得できればランキング上位に掲載される仕組みになっている。

「私自身、ブログが世の中に出たころにブロガーをしていました。ブログ文化が好きで、それを広めたいと思いましたが、アクセスがないとブロガーのモチベーションが続かず、ブログを書かなくなってしまいます。にほんブログ村を活用して、読者を増やせばブログを書き続けてくれます」（村内氏）

ブログ文化を愛する同氏は、ブログ文化の発展を支えるため、自らブログサービス「muragon（ムラゴン）」も立ち上げた。

「ブログサービスの閉鎖がきっかけでブロガーを止めてしまう人がいるのを知り、そんな人がブログを続けられるように、自社で無料のブログサービスを立ち上げました。スマートフォンへ完全対応し、TwitterやFacebookアカウントから手軽にコメントでき、地域タグやオリジナルのタグを活用すれば、同じ興味を持ったブロガーや読者とつながることができます。そして何よりも、90万近くのブログが集まる『にほんブログ村』と簡単に連携可能です」（村内氏）

Webメディア事業では、新しいサービスの立ち上げ準備が進んでいる。オリジナルCMS「inkrich（インクリッチ）」だ。

「インクリッチ」は、ブログを読んで楽しんでもらうだけでなく、プロのブロガーを目指したり、お小遣い稼ぎにブログを書いたりしたい、一つ上のステップを目指すブロガー、あるいはコーポレートサイトを自社で立ち上げて運営したい企業をターゲットに開発が進められている、同社のオリジナルのCMSである。

「ブログを収益化する方法の一つにグーグルアドセンス(Google AdSense)の活用がありますが、無料ブログではグーグルアドセンスの申請ができないケースがあります。独自ドメインを取得してWordPressをはじめとしたCMSを使用するなどしてWebサイトを作る必要があります。インクリッチなら、初心者でも簡単にグーグルアドセンスが使えるWebサイトを立ち上がることができます」（メディア本部 本部長・松木太一）」

インクリッチを使えば、ブロガーがこれまでの経験を生かして、Webメディアを立ち上げることができる。企業にとってもコーポレートサイトを充実させて、オウンドメディアとして活用することができるようになる。

「ブロガーにブログの執筆からWebメディアの運営にステップアップしてもらうためのツールですが、インクリッチのリリース後は当社でもWebメディアの立ち上げや運営がよりスピーディにできるようになります」（松木氏）

同社の新サービスとなる「インクリッチ」を使ってはいないが、ムラウチドットコムではすでにWebメディアの運営経験がある。ランニング・ジョギング・ウォーキングに特化したWebメディア「Spolete（スポリート）」だ。

「スポリートは『走る』をテーマにしたWebメディア。ランニングやウォーキングに関する情報を発信すると共に、紹介した商品を購入できるECサイトでもあります。当社はECサイトの運営が主力事業であり、自社倉庫も所有しています。旧来の事業と新たな事業をうまく融合させたWebメディアです」（松木氏）

ムラウチドットコムの現在のメイン事業はEコマースだ。自社ECサイト「murauchi.com」を運営し、「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」「Amazon」などのショッピングモールにも出店。パソコン、家電、照明器具、美容健康器具、スポーツ用品、生活雑貨など幅広い商品を取り扱っている。

「当社は八王子を拠点とした家電量販店『ムラウチ電気』の流れを汲んでいます。1999年にオンラインストアをはじめ、2005年4月にEC事業部が独立して株式会社ムラウチドットコムとなりました。ムラウチ電気の店舗は現在すべて閉店となり、Eコマース事業にフォーカスしています」（村内氏）

ムラウチドットコムの歴史を遡ると、1912年（大正元年）に村内氏の曾祖父が開いた醤油店が源流。戦後に祖父が「有限会社村内テレビ」を創業し、テレビの製造・販売をはじめた。当初は自社オリジナルのテレビを生産していたが、その後、東芝のテレビを製造販売することになった。

「当社は『伝統あるベンチャー企業』であると宣言しています。時代に合わせて事業を変えながら、常にベンチャーマインドを持って新しいことに取り組んできました。オンラインストアの設立も、にほんブログ村の立ち上げも、時代の流れに合わせた変革だといえます。現在進めているWebメディア事業も、そんな新しいチャレンジの一つです」（村内氏）

オンラインストアもにほんブログ村も、開発は外部のシステム開発会社に委託していた。しかし、2013年に「muragon（ムラゴン）」を立ち上げた際、社内エンジニアを揃えてインハウス開発に乗り出した。その時に作ったWeb部隊が育ち、自社のWebサービスやECサイトの改修を担当し、新しいプロダクトやサービスを生み出そうとしている。

「当社は歴史のある会社ですが、私たちが所属するWeb部隊は、ITベンチャーのような雰囲気を持っています。フレックス制を導入するなどエンジニアが働きやすい環境を整え、新しいサービスやプロダクトへのアイデア・意見を自由に言えるフラットな組織です」（松木氏）

醤油屋からテレビメーカー、家電量販店、Eコマースを経て、Web開発会社に。今まさに4度目の脱皮を図ろうとしているムラウチドットコム。EコマースとWeb開発の2つの事業をうまく活用し、IT企業として新たなるステージにチャレンジ中だ！