「セブン-イレブンにATMがあったら…」というお客さまの声から、すべては始まった
全国に25,000台以上設置されたATMをプラットフォームに、現金の入出金や振込、各種チャージサービス、海外送金(振込)、ATM受取(現金受取サービス)など、「より近くて便利な」金融サービスを提供する株式会社セブン銀行。2018年度の通期決算では過去最高の収益を達成している。
同社の設立は2001年。きっかけは、セブン-イレブンに来店するお客さまの「セブン-イレブンにATMがあったら便利なのに…」という声だった。以降、徹底してお客さま視点に立ち、既成概念に捉われない新たなサービスの創造にチャレンジしている。その軌跡の一部を紹介しよう。
・偽造カードによる金融犯罪の増加に対応するため、セブン銀行ICキャッシュカードを発行
・バリアフリーへの社会的要請を受けて、視覚障がいのあるお客さま向け音声ガイダンスサービスによるATM取引を実現
・在日外国人労働者の増加による送金ニーズの高まりから、海外送金サービスを開始
・インバウンド市場の拡大を見据え、ATM取引画面・明細票を12言語に対応
・決済サービスの多種多様化を受けて、デビット付きキャッシュカードの発行を開始
・スマートフォンの急速な普及に対応した、スマートフォンだけで入出金ができるサービスを開始
さらに、2018年5月にATM受取(現金受取サービス)を開始。10月には、交通系電子マネーなどへのチャージ取引をスタートしている。
そして2019年3月末現在、冒頭で触れたようにATM設置台数は全国に25,152台、国内金融機関等の提携社数は615社にのぼる。ATM年間総利用件数は8億2,900万件という驚異的な数字で、1日1台あたりのATM平均利用件数は92件を超える。
同社のチャレンジはさらに続く。2010年にリリースされ、全国で利用されている第3世代ATMに代わる次世代、すなわち「第4世代ATM」を2019年9月から順次導入している。第4世代は世界有数の認証精度を誇る顔認証技術を搭載。将来的には、顔認証による本人確認やQRコード決済に対応する予定だ。
ATMごとに現金の需要をAIが予測、IoTによりATM各種部品の故障を感知・予測することでさらなる運営の効率化を図り、現状でも稼働率99.98%の「止まらないATM」というポジションをさらに強化する。文字通り「次世代」のATMである。2020年夏までに東京都内での設置を進め、2024年度までに全ATM入替設置を予定しているとのことだ。
キャッシュレス、フィンテック…時代は、100年に一度とも言われる大きな変化を迎えている。そこで同社はこれまでの入出金のプラットフォームという基盤を保持しつつも、新たに「本人認証のプラットフォーム」としての第4世代ATMの価値を、世に問う決断をしたのだ。設立19年目に入った同社のチャレンジは、決して終わることはない。
ATMサービスを主軸とするユニークなビジネスモデルと、徹底したお客さま視点が過去最高益に寄与
流通系銀行・ネット系銀行の競合がひしめく中、なぜ株式会社セブン銀行は、過去最高益を実現できているのか。
大前提として、同社が採用しているビジネスモデルが、通常の銀行とは大きく異なっているという点は押さえておかなければならない。貸出・融資から利ざやを得るモデルではなく、提携金融機関等から「ATM受入手数料」を得ることで、ATMサービスを主軸とした同社の収益が担保されるという構造だ。
しかし同社が最も大切にしていることがある。それは「徹底したお客さま視点」だ。ここからは人事部副部長の三原卓哉氏のコメントを交え、具体的な取組みの一部を紹介する。
すでに普段使いをしている方々はご存知かもしれないが、同社のATMはインターホンと一体型になっている。三原氏によれば、これは「初めから(第1世代ATMから)一体型でリリースしています」とのことだ。実は一体型というのはそれまでは当たり前ではなく、ATMと電話は別々になっているものであった。あえて一体型にした理由はいくつか挙げられるが、中でも同社の徹底した「お客さま視点」を感じさせさるのは、次の話だ。
「視覚障がいのあるお客さまは、備付けのインターホンのボタンと音声ガイダンスを使って、暗証番号や金額を入力でき、安心して取引きができます。また、一体型であればこそ、ATMコールセンターにお問合せした際に、操作プロセスのどの段階で電話をされてきたのか、オンラインで把握し、適切な対応がいち早くできる仕組みになっています。インターホンひとつとっても、独自のお客さま視点で開発されています。」(三原氏)
そのATMコールセンターは、月間約40,000件の問合せに対応しているとのこと。問合せの中から問題を分析し、即改善につなげている。
導入の初期には、キャッシュカードや現金の取忘れが頻発。そこでカードとレシートを受取らないと現金の取り口が開かないようにする。それでも取忘れが発生すると、次のATMでは取出口がライトアップする、さらには一定時間を過ぎるとアラームが鳴るようにしたり、音声でご案内する。アラームの音色やボリュームを工夫する…というように、同社は徹底的にお客さま視点にこだわってきた。
また、特定の金融機関へのある取引時に問合せが多い、となれば、その金融機関の表示画面を確認し、より見やすく変更を提案する。さらに、あらゆる年代のモニターを集め、デモ機で操作する様子を同社の社員が観察。操作する手が止まった時点でその理由をモニターからヒアリングし、細やかな改善につなげている。
「サービス開始から18年、愚直なまでにサービスの進化を積み重ねてきました。それが何よりの差別化ポイントです。ではなぜ積み重ねて来られたのか。個人的には、流通グループから受継いだDNAだから、としか言いようがありません。例えばセブン-イレブンの店舗では、自分たちが自信を持ってお勧めできる商品を並べます。商品開発にも妥協はありません。マーケティングを行い、何度も試食をして“さらに美味しくなったね!”と、これならお客さまにお勧めできると思える商品だけを扱っているわけです。私たち銀行も同じで自信をもってお勧めできる金融サービス・商品をとことん追求しています。」(三原氏)
約500名の会社であり、ほとんどの社員の顔と名前が一致する。部署の垣根はなく、部内外・年次問わず、意見交換が活発。
経営者でも正解がわからない時代、社員が自律的に行動できる風土改革が不可欠
会社のDNAであり、競合との差別化ポイントにもなっている「徹底したお客さま視点」。株式会社セブン銀行はその視点を、同じく重要なステークホルダーである社員にも振り向けている。
2019年4月、これまで触れてきたような事業ステージの変化と、社員のモチベーション向上のために、同社は人事制度を改定した。
「職群別に期待する姿を明確にして、より高いレベルで会社に貢献することを促す行動評価と、高い業績目標を達成することでさらなる成長を促す業績評価。この両輪で評価を行っています。よりきめ細かく、透明性の高い人事評価を目指し、単に処遇を決定するだけにとどまらず、社員の成長を促す要素の一つになる、と考えています。」(三原氏)
同社の社員数は460名(2019年3月末現在)。うち8割を中途入社の社員が占めている。前職の業界は金融関連が多いそうだが、金融と一言で言っても、その内訳は銀行をはじめ、証券、生・損保、クレジットカード、法人ローン、消費者金融など、実に多様だ。さらに近年では、金融系SIer、金融系以外のSIer、独立系SIerなどの出身者も増えてきている。もちろん金融関連以外からの採用も活発だ。
「多様性という観点では、かなり充実してきたと捉えています。今後この多様性をどのように活かし、当社の風土を再構築するかが課題です。」(三原氏)
高度成長期からバブルが崩壊するまでは、日本企業は何をすれば業績が向上するか、ある程度明確だったのかもしれない。例えば金融機関であれば預金を集め、金利を上乗せして貸し出す。流通業界であればカリスマ的な創業者と呼ばれた人たちが掲げた指針に沿って事業を展開する、というように。
「しかし変化の激しい今は違います。経営者であっても、何が正解かがわからない時代と言えるのではないでしょうか。そんな時代においては、社員一人ひとりが自律的に行動し、能力を発揮できるようにワークスタイルを変革しなければなりません。その先に会社の変革があり、そういう中から新しいサービスも生まれてくるのではないでしょうか。」(三原氏)
過去最高益を実現させた今こそ、もう一度チャレンジ精神を発揮しなければならない。そのためには、会社が成熟してしまう前に風土を再構築することが課題である。それが三原氏だけではなく、同社全体の認識だという。
中途入社者がプロパーをはるかに上回るという点は、今後もしばらく変わることはなさそうだ。ただし平均年齢が徐々に下がっていることは、過去18年の同社のトレンドとは異なっている。また年齢が若くなればなるほど女性社員の比率が高い。その流れに三原氏は「大きな期待を持っている」と語った。
「40歳以上は男女比が7:3ですが、40歳未満の男女比は5:5になります。今後は、社内がさらに刷新されるのではないか、これまでとはまた違うセブン銀行が誕生するのではないか、そんな期待を持っています。」(三原氏)
株式会社 セブン銀行の社員の声

20代後半
2019年04月入社
また、教育体制もしっかりしており、上司や周囲も手厚...続きを読む

20代後半
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2019年02月入社