グループのサービス品質向上や業務効率化を通じてグループ力の底上げに貢献
セプテーニグループのソフトウェアエンジニアリング企業である、株式会社FLINTERS。グループ企業が利用/提供するプロダクトの開発・運用を手がけている。ハイレベルのエンジニアチームとして、セプテーニグループのサービス品質向上や業務効率化を通じてグループ力の底上げに貢献している存在だ。同社が開発したプロダクトは社内でも高く評価され、セプテーニが半期に1回開催するアワードでも表彰された。
同社が目下手掛けている代表的なプロダクトは、「PYXIS」と「GANMA!」の2つ。
「PYXIS」は、インターネット広告の運用最適化ツール。インターネット広告事業を手掛けるセプテーニからの業務効率化・サービス品質向上のニーズを受け、セプテーニ・オリジナルが独自開発した。インターネット広告においては、バナーをはじめとする広告クリエイティブの入稿作業が大量に発生するとともに、配信後の結果分析やその分析に基づいてより効果的なクリエイティブになるよう改善していくことが不可欠だ。従来、こうした業務は手作業で行われてきた。「PYXIS」は一連の業務を自動化することで、広告効果向上のためのPDCAをより速く、より正確に回すことができるため、大幅な業務効率化に貢献している。
「『PYXIS』は2012年にリリースし、今では業務において無くてはならないほどの存在となり、社内でも高く評価されています」と取締役CTOの河内崇氏は話す。
評価は、社内からだけではない。ゼネラルマネージャーの稲毛俊夫氏は、次のように説明する。
「大手総合広告代理店からも当該ツールが高く評価され、その結果部分的に共同利用、共同開発を試みることになりました。また、今後もこの知見をもってオリジナルプロダクトの開発にも繋げ、マーケットでの利用拡大を図りたいと思います。」
「GANMA!」は、マンガコンテンツ事業を手掛けるグループ企業のコミックスマートが運営するマンガアプリ。新人漫画家の発掘・育成を目的に、マンガファンによる応援レビューやコメント投稿などの機能を盛り込み、ファンの力で漫画家を育てる楽しみを提供している点が特徴的だ。
「インターネットの特性を活用し、アプリユーザーが今どこを見ているかなどの情報を即座に編集部にフィードバックし、作品づくりに生かせる仕組みにしました」とシニアマネージャーの貫名洋輔氏は説明する。
そのほか、グループ企業のAI導入のサポートなども行っている。
また、セプテーニグループのオフショア開発拠点としてベトナムに設立されたFLINTERS VIETNAMとも連携し、ハノイ工科大学出身者などの優秀なエンジニアを数多く擁してグループの開発案件の多くを手がけている。
セプテーニの技術力を底上げするために、エンジニアチームを分社化
FLINTERSは、2014年1月、セプテーニの事業開発本部を分社化する形で設立された。「グループ全体を技術力で底上げするミッションを果たすため、独自のカルチャーを醸成し、よりスピーディーに意思決定できるように、エンジニア集団として独立させることになりました」
そんな同社は、「From Japan to the world 日本発、世界へ。」というビジョンの実現に向けて、最高の技術力をもとに大きなビジネスゴールを達成する組織を理想とする。そしてそのためのミッション「私たちは、先進的な技術で、全てのユーザーを魅了します。」を掲げ、エンジニア集団としての技術力向上を最重視している。
そこで、その時点での自らの目指すところ/自らが取っている行動の理由/自らが求める姿勢、を文章化した「技術指針」を掲げ公開している点も特徴的だ。詳しくは次の章で説明をするが、エンジニアにとって理想的な開発環境の構築を目指していることがよくわかるはずだ。
今後のステップについて、稲毛氏は次のように話す。
「従来どおりセプテーニグループの開発案件に貢献していくことが第一優先の任務ですが、マーケットに需要があれば、オリジナルのプロダクトを追求するなど開発を中心に貢献していきたいと思います。」
「グループ内の多様なサービスをサポートしていく上で、多様なスキルを持つ自立的なエンジニア集団でありたいと思います。サポートだけでなく、その技術力により開発した独自サービスで当社が利益を上げることも、グループに対する一つの貢献ではあると思っています」と河内氏は補足する。
海外に関しても、すでにベトナムにオフショア拠点を設けているが、同社の動静が注目されるところだ。
自らの目指すところ/行動理由/自らが求める姿勢を示す「技術指針」
同社の組織づくりの理想は、「最高の技術力を背景に、大きなビジネスゴールを達成する組織」。この実現のために、「大きな挑戦ができる環境」「次のチャレンジを用意する文化」「働く意欲が湧く風土」作りに取り組んでいる。
個々のメンバーにおいては、次の7項目の行動規範を重視。なお、この行動規範は全社員が考えて策定したもので、印刷したカードを全員に配布して浸透を促している。
●あなたの5分はみんなの5分
●批判より提案、そして行動を
●最終的に決めたことは惜しみない協力を
●顧客を知り、期待値を超えろ
●攻守の優先付けで、最大価値を目指せ
●最適な技術が最高の選択肢
●学びを共有し合い、相乗効果を起こせ
「この行動規範に則って活躍したメンバーを中心に、月毎に全員の投票で『賞賛大将』を選出し、称えています」(稲毛氏)。さらに半年に一度MVPを選出し、プレートに名前を刻んで永く栄誉を表彰している。
なお、行動規範は人事考課の項目ともなっているが、同社ではメンバー同士が評価し合う「360度マルチサーベイ」を取り入れており、公平・公正な人事考課となるよう仕組み化している。
開発業務の指針としては、「リファクタ可能にする」「デスマーチは起こさない」「保守的にならない」という開発ポリシーを掲げて推進。
また、働き方としては、
「当社は完全に裁量労働制を取っています。業務時間は各チームが自律的に決めて自治的にコントロールしています」(河内氏)
そして、エンジニア集団として大きな要素が、次の「技術指針」だろう。同社では、その時点での自らの目指すところ/自らが取っている行動の理由/自らが求める姿勢、を文章化しホームページで公開。2018年11月以降は、下記の項目を掲げている(一部)。
●我々は“高速高品質”を目指す
●我々は保守性のあるコードを高速に生産する
●第一の選択肢としてScalaの利用を積極的に検討する
●スクラムを採用する理由は、現状を把握し早く適切な判断をするため
●DDDを採用するのは、チーム全員で要件の芯を捉え続けるため
●ユニットテストを書く理由はリファクタリングをし続けるため
●レビューを行うのは意識を保ち続けるため
「この技術指針は、常にアップデートして生きたものにし続けています」と河内氏。
能力向上への意識も高く、恒常的に勉強会が行われているほか、プロジェクト横断でメンバーをシャッフルしコミュニケーションを深める機会も設けられている。
「当社のエンジニアには、ギークもいれば、コミュニケーションにポジティブなタイプもいます。共通しているのは、自分の強みを自覚し、積極的に伸ばそうとしているところ。また、チームで働くことにポジティブであることも共通しています。そんな方は、ぜひアクセスしてください」と貫名氏は呼びかける。