株式会社ダンゴネット

不動産会社にとって賃貸住宅の管理業務はとても煩雑で手間のかかるものだ。物件のオーナーから管理の委託を受ける際、賃借人に部屋を貸す際には契約書など重要書類を作成しなければならない。毎月の家賃の入出金管理やオーナーへの収支報告書の提出、空き物件の管理や空室を埋めるための広告出稿など、やるべきことは目白押しだ。手間が多ければ、それだけ人的ミスの危険性も高くなってしまう。資金力のある大手不動産会社であれば、自前のシステムを導入して解決できるだろう。しかし、中小不動産会社や町場の不動産屋となると、そうはいかない。この窮地を救う不動産賃貸管理ソフト『賃貸名人』を開発したのが、株式会社ダンゴネットだ。

「開発のきっかけは、偶然のようなものでした。システムの受託開発を行っていた頃、事務所の1階にあった不動産会社から賃貸管理について相談を受けたのです。不動産業界はまったくの未知の世界でしたが、いつか自社サービスを持ちたいと考えていたので、挑戦することを決断。そして2002年に誕生したのが、当時の業界相場の約10分の1という圧倒的な低価格を実現した『賃貸名人』の前身となるソフトでした」（代表取締役社長・松川竜也氏）

そのときから80回以上のバージョンアップを重ね、圧倒的低価格を維持しながら50種類以上の機能を追加、操作性も飛躍的に向上した現在の姿へと変貌した。その使い勝手の良さは、北海道から沖縄まで全国各地5000社以上に導入され、業界トップクラスのシェアを獲得していることからも容易に想像できる。

これほどの支持を得ることができたのは、「お客様が抱えている不満や要望を何よりも大切にしている」からだと松川代表は語る。

「自前のコールセンターを持ち、お客様からの問い合わせや要望、クレームなどをデータベース化しています。その中から要望の多いものに応える開発をしてきました。私たちは不動産業界出身ではないため、彼らが抱える課題を客観的視点で分析し、解決できる仕組みやサービスを開発できます。そこがお客様に受け入れられる製品を開発できる要因かもしれません。また、保守費用のみで更新やバージョンアップ費をいただいていないところも、お客様には喜んでいただいています」（松川竜也氏）

『賃貸名人』からスタートした株式会社ダンゴネットのソフト開発は、不動産業界のニーズに応えるべく、売買管理データベース『売買名人』、工事管理データベース『リフォーム名人』とラインナップを増強。近年は、不動産仲介業者向けの集客ツール『集客名人』も開発、展開している。集客名人とは、不動産仲介店舗の窓に貼られている家賃や間取りが記載されたチラシをLEDライトパネルで光らせる装置だ。こちらは大手不動産会社も含む1000店舗以上に設置されていて、第2の柱に成長する可能性を秘めている。

「不動産業界で働いている人の多くは、様々な問題意識を持っています。しかし、具体的な解決策まで持っている人は少ないのが現状です。また、策があっても、それを形にできるだけの時間的余裕や資金力、技術まで併せ持つのはさらに難しいというのが現実です。私たちダンゴネットはそこに挑戦しています。不動産業界が抱える課題に対して、ソフトやハード、何らかの仕組みを生み出すことで、その解決に貢献していきたいと思っています」（松川竜也氏）

ここ数年、国をはじめ業界全体で取り組まなければならない課題に中古物件市場の活性化がある。人口減少時代に突入し、今後住宅需要が低下していくことが想定される中、膨大な数にのぼる中古物件をどのように活用していくかが大きな問題になっているのだ。これに対し、ダンゴネットは、株式会社ダンゴセレクトという子会社を設立。不動産オーナーが所有している物件に対してIoTの導入など低コストで実現可能な空室対策や管理業務の効率化、賃貸物件の利回り向上といったサービスの提供をはじめている。

「20年弱、不動産業界に関わってきたことで、業界が抱える数多くの課題が見えてきましたが、同時に、私たちと想いを同じくし、協力してくれる仲間も増えました。これからは、そんな会社と適宜パートナーシップを組んで、業界全体を元気づけられるような仕掛けをしていきたいですね。まだ、発表はできませんが、水面下で動いていることやアイデアはたくさんあるんです」（松川竜也氏）

株式会社ダンゴネットの主軸製品である『賃貸名人』も2019年夏に完全リニューアルされる。さらなる機能追加や性能の向上に向けてプラットフォームから刷新するのだという。

「賃貸名人はまだ完成形ではなく、今後もお客様のニーズに応じて、随時機能追加やUIの改善を行っていきます。そのための完全リニューアルです。他の名人シリーズも状況に応じて、手を加えていく予定です」と開発部門の責任者である常務取締役・松川聖子氏は語ってくれた。

「当社の開発スタイルは、かなり自由度が高いと思います。開発するのはすべて自社サービスですから、お客様のニーズや課題に対して、どういう機能やサービスでアプローチしていくかから自分たちで考えられます。いわゆる企画、設計という上流工程からチームとして取り組むので、『自分の手で生み出した』という手応えや『お客様に喜んでもらえた』という実感を得たい人には、かなりやりがいのある環境だと思います。それに、開発言語や技術についても、『コレでなければならない』というものはありませんので、挑戦してみたい技術があるなら、どんどん提案してほしいと思っています」（松川聖子氏）

ただし、自由度を認めるには、一方で責任と主体性が求められる。少数精鋭の開発体制を組んでいるため、誰かからの指示を待ってばかりいるのではなく、自ら提案し、行動していける人でないと難しい。また、開発はすべてチームで行うため、コミュニケーションに長けた人のほうが馴染みやすいとも松川常務は補足する。

「エンジニアそれぞれが『これをつくりたい』というアイデアを持ち寄って、みんなで検討しながら共に形にしていきます。そのため、チームのみんなで意見をブラッシュアップしながら最善の形を模索していくことを大切にしています。一人で黙々とプログラミングするよりもみんなで切磋琢磨しながら協力してモノを創ることを楽しめる人がいいですね」

少数精鋭という表現から残業時間の長いブラックな職場だと勘違いする人がいるかもしれないが、ダンゴネットは真逆だ。残業はほとんどなく、残る人がいても1時間程度が普通。産休育休を取得し、現在時短勤務で働いている女性社員もいる。

「社員40名ほどの会社ですが、業界トップクラスの自社製品を持ち、そこに甘んじることなく、新しいことにも積極的に挑戦していきます。今後も決してなくなることのない不動産業界において、新しいサービスや仕組みを創出することで業界に風穴を開ける。そんな意気込みに共感できる人を待っています」（松川竜也氏）