株式会社ナシエルホールディングス

株式会社ナシエルホールディングスは、株式会社M＆A Properties、株式会社グローアップ、ホクトシステム株式会社、株式会社スタジオ・アルカナの4社で構成されるホールディングスカンパニーだ。グループ経営体制へと移行したのが2019年１月31日と日が浅いため、社名の浸透度が高いとはいい難い。しかし、近年、採用領域で注目され、メディアでもたびたび取り上げられている新卒逆求人メディア『キミスカ』は、ナシエル・グループの中核事業の一つである。

「『キミスカ』は、学生がプロフィールや就活記録などを登録しておけば、興味を抱いた企業の方からスカウトが届くダイレクト・リクルーティング・メディアです。企業にとっては欲しい人材に絞って採用活動を行えるため、採用コストや手間を削減できますし、学生にとっても自分だけでは知りえなかった優良企業と出合える機会を得られると支持いただいています」

代表取締役・後藤俊輔氏が説明するとおり、2014年卒の就活シーズンに誕生した新しいメディアながら、すでに登録している新卒者の割合は全体の20％に達し、2020年卒の登録者数は10万人を超える見込みだという。就活生の間で急速に浸透している注目のメディアなのだ。

そして、ナシエル・グループのもう一つの中核事業が、飲食・小売業を支援する総合サービスプラットフォーム事業である。飲食店や小売店をとりまく環境は厳しいものがある。集客力は立地に左右される部分が大きいが、好立地物件は当然ながら家賃が高い。開店するには設備をそろえる必要もあるし、オープニングスタッフも集めなければならない。サービスの質を維持・向上するため、優秀なスタッフには長く働いてもらいたいし、事業拡大に向けた多店舗化には、さらなる資金と人的リソースが不可欠だ。こういった各フェーズで発生する課題に対してITを活用したソリューションを提供することで、その解決を支援しているのである。

「お店を探している方へは、店舗物件を専門に扱う不動産仲介サイト『テンポスマート』及び、店舗物件情報プラットフォームである「ホクトシステム」がありますし、人材の採用を検討している方へは、業界最大級の飲食業界特化型人材紹介サービス『エフジョブ』があります。また、多くの飲食店の経営者様と出店・人材採用のお手伝いをさせて頂いている中で、定着率の低さを課題と考えている方が多くいらっしゃることが判り、その原因は評価制度の欠如によるものだと判りました。上記課題を解決すべく飲食企業向けの評価制度を構築しております。また、退店や事業拡大を考えている経営者には、M＆Aアドバイザリーも行えますし、飲食・小売店の出店準備から出店、運営、退店までを総合的に支援する循環型プラットフォームを目指しています」（後藤氏）

ナシエル・グループ各社が展開する事業のポテンシャルは高い。キミスカだけでなく、『テンポスマート』の会員数、店舗仲介の実績は毎年20%以上で成長している。ホクトシステム社は飲食・小売り・サービス業界に特化し、創業30年目の非常に知名度のある会社で、希少な未公開物件情報をはじめ、数十万店もの店舗・立地データを保有している。M＆A Propertiesが手掛けたM＆Aの取扱額は350億円以上にのぼり、飲食業界に特化した人事評価制度は業界初のサービスとして注目されつつある。

だが、各事業が秘める可能性は「こんなものではないはずだ」と後藤氏は語る。
「各社がそれぞれ展開してきた事業を統合して飲食・小売業を支援する総合サービスプラットフォームへ進化させようと動き始めたのは、わずか半年ほど前のことです。そのため、今は試行錯誤の段階だといえます。ただ、それぞれが蓄積してきた情報やノウハウを有機的に結び付けることができれば、一つひとつのサービスの質を一層高められるだけでなく、新しいサービスも生まれるはずだと確信しています。一見、事業領域の異なる飲食・小売と新卒採用もアイデア一つでつなげることは可能なはず。こういったグループ全体でのシナジーを起こすため、各社のマーケティング部門をナシエルホールディングスに集約してマーケティング室を新設しました」

グループ各社が運営するサイトなどの企画・開発を引き受けているスタジオ・アルカナも独自のプロダクト開発を進めており、AI技術を活用したプロダクトを2019年中に運用開始する予定だという。飲食・小売という業界やHR、不動産領域とITを掛け合わせることで、さらなる事業と会社の成長を実現していく――それがナシエルホールディングスの描く近未来だ。

「既存サービスの深掘りや新規サービスの立ち上げを進めていき、2021年中の上場を目指しています。ただ、今思い描いていることに何が何でも拘泥するつもりはありません。時代に合わせて、そのとき保有するリソースを最大限活かしながらサービスを“つくる側”も“利用する側”も胸が高鳴る世の中を目指す。この基本的なスタンス・軸がずれていなければ、どのような事業、サービスを手掛けてもいいと思っているからです」（後藤氏）

「胸が高鳴る世の中に。」
ナシエルホールディングスは、このグループビジョンを掲げ、誰もがワクワクするような情報とサービスの提供に注力している。ただ、このグループビジョンの実現も、グループ各社のシナジーの醸成も、グループ会社間の密な連携ができなければ絵に描いた餅でしかない。

「当グループはM＆Aを行いながらここまで拡大してきました。そのため、グループ会社の間には相容れない文化や壁のようなものがあると思う人がいるかもしれません。しかし、私がいうのも変ですが、そういった障壁というものが驚くほどありません。今風にいえば、カルチャーフィットが高いということでしょうか。会社間や社員同士はもちろん、上下間においても“見えない壁”のようなものはほとんど感じていません。」（後藤氏）

そのようなカルチャーが根付いているのは、社員1人ひとりが主体性を持って自ら考え、能動的に動くことができる集団だからだろう。だからといって、意見が対立して関係性がギスギスするようなことはない。互いの意見も尊重する風土があるからだ。
「周りを気にし過ぎず、自分の意見をはっきりいえる人、自分の手でサービスを創るという気概のある人、そのために努力できる人が、当社では活躍しています。これから一緒に仲間になってもらう方にも、自分の所属外だからといって遠慮するのではなく、いいアイデアや意見を抱いたときは、『私はこう思います』と発信してもらいたいと思っています。各社が集まって１つのグループなので、遠慮することはありません」（後藤氏）

このような環境だからこそ、「仕事で得られる手応えが大きく、ワクワクと仕事を楽しめる」のだと続ける。
「お話しした通り、プラットフォーム構想は動き出したばかりです。今のタイミングであれば、業界に大きなインパクトを与え得る仕組みづくりをゼロに近いところから手掛けることができますし、世の中からどのように評価されるのかも当事者の一人として体感できます。今後、上場したときには、ナシエルホールディングスの社会的評価も目の当たりにできるでしょう。そして、その間に得た経験は、間違いなく自分自身を大きく高めてくれるはずです。我こそはと思う方、お待ちしています」