ローンチ後1年で大手企業から引き合いが急増中の『AMATERAS RAY』
データサイエンティスト業務の代替が可能なAIデータ分析・解析サービス『AMATERAS RAY』を提供する株式会社aiforce solutions(エーアイフォース・ソリューションズ)。同社が提供している『AMATERAS RAY』は、専門知識を必要とせず数クリックで操作が完了する。数ヶ月要するとされる業務を最短で“数日”に短縮することが可能だ。
また、AI導入コンサルティング、プロトタイプ開発支援、RPAと『AMATERAS RAY』との連携支援などを低価格で提供することで、幅広い企業へのAI導入をサポートしている。さらに、『AMATERAS RAY』を活用してデータ分析・解析業務を社内リソースで内製化するため、e-Learningプログラムや、企業向け研修プログラム、大学などと提携したAI教育サービスも提供している。
同社の設立は2018年7月、同年10月に『AMATERAS RAY』をローンチとまだ日は浅いが、名だたる企業が次々に導入を進め、そこでの高評価が次の引き合いへとつながっている。
例えば大手アイスクリームメーカー・X社の場合。
X社はそれまで商品の生産管理・在庫管理を行うため、AIを活用した商品別・旬別の出荷量構成比の高精度な予測を、3ヶ月ごとに外部のデータ解析サービスに委託していた。しかし、委託された外部ベンダーにはX社の業務知見がない。そのため、予測結果に影響する特徴量の追加・選択のヒアリングやトライアルにかなりの工数を費やしていた。そして工数が増加することにより、外部委託費が膨れ上がるという課題に直面していたのだ。
この課題を解決するには、現場で仮説を持っている実務担当者本人(X社の場合は営業推進本部・副部長)が、簡単に、かつ何度でも検証できる現場力の向上が欠かせない。そこで同社は、数クリックでAI予測モデルを作成できる『AMATERAS RAY』を提供、内製化。外部委託費は大幅に削減され、出荷量構成比の予測頻度は3ヶ月から“随時”へと改善されている。
このほかにも、事例は目白押しだ。大手完成車メーカーとの協業による、特許査定の業務削減。特許事務所との協業による、クライアントの特許調査・特許事務管理、特許年金管理の業務プロセス変革。RPA/Digital Laborのベーステクノロジーを提供する企業との協業による、コンサルティングサービスの提供。そして大手総合商社との資本業務提携による、多様な事業領域へのAI導入促進…など。
ローンチしてわずか1年余り、同社が提供する『AMATERAS RAY』は、日本の産業の生産性を着実に向上させつつある。
中国人のデジタルリテラシーの高さに衝撃を受け、日本のAIの民主化を着想
同社が目指しているのは“AIの民主化”である。代表取締役CEOの西川智章氏は「全ての人が読み、書き、算盤レベルでAIを楽しく活用できる。そんな世の中を実現させたい」と語る。
西川氏は外資系コンサルティングファームを経てAIベンチャー企業に勤務。AIビジネスコンサルティングやビックデータ解析サービス、先端技術を活用したビジネスモデルの構想・計画策定などを支援してきた。さまざまな案件を精査する中で西川氏は、データサイエンティストやAIエンジニアなど専門家の能力が不可欠な難易度の高い案件は限られていることに気づく。“8割はツールで自動化できる”と感じていたという。それが『AMATERAS RAY』を生み出すヒントとなった。
より直接的なきっかけは、前職で中国事業を立ち上げるため、現地で3年間暮らした経験がもたらしたそうだ。
「デジタルに対するリテラシーのレベルが圧倒的に高いことに衝撃を受けました。60〜70代の高齢者でも、チャットアプリやSNSをふつうに使いこなしているのです。無人コンビニが一気に普及するなど、社会インフラの整備も早い。一方で日本はデジタルに苦手意識が強い人が多いため、企業も投資を回さない。中国や米国ではAIについて学ぶ教育機関が500〜600校ありますが、日本はわずかその100分の1にすぎません。この差に大きな危機感を持ちました」(西川氏)。
人口が減り続ける日本でGDPを伸ばしていこうとすれば、企業の生産性の向上は欠かせない。生産性の向上には、データの活用が生死を分けるカギとなる。とはいえ、企業で働く人たちが、プログラミングやディープラーニングなどの専門性をすぐに身につけられるわけではない。ならば『Excel』のように誰もが“とりあえず可視化”でき、何度でも検証できるような分析・解析サービスを作ればいい。そんな発想から生まれたのが『AMATERAS RAY』である。
西川氏によれば、『AMATERAS RAY』を導入し、デジタルトランスフォーメーションに成功した企業は、例外なく同社の“ファン”になってくれるとのこと。そこで生まれた関係はビジネスの深耕にとどまらず、人材教育にも発展していっている。
西川氏と同社のCOOである高橋氏は2018年から国立大学でAIに関する講義を行っている。講義の場では、現在協業しているパートナー企業から提供された“実データ”をもとに、60名の学生が『AMATERAS RAY』を使って分析・解析。需要予測などの結果を提供元の企業にプレゼンするのだ。
パートナー企業の協力を得て、同社が目指す“AIの民主化”は一歩ずつ前進していると言えるであろう。
親子がAIについて話し合い、未来を語り合う。そんな時代をたぐり寄せるために
同社で一緒に働くメンバーに求める資質について、西川氏は「謙虚で、学習意欲があり、“AIの民主化”への挑戦というビジョンに共感してくれる人」と語る。このビジョンに共感し、つながることができるのであれば、その人の属性は関係ない。
例えば、同社がRPA人材育成サポートを行う企業との協業で行った『AI女子育成プロジェクト』で、参加者270名中トップだった女性が、同社のビジョンに共感し、転職。現在はAI教育の動画で自ら教鞭をとり、コンテンツを配信している。
また、大手鉄道会社出身の男性社員は、“見えている未来を自分の手で変えたい”との思いから同社に転職してきた。
インターン生も積極的に受け入れている。今回、西川氏への取材に同席した私立大3年生のK氏(女性)は、AIを理解することからスタート。実データを使った『AMATERAS RAY』での分析・解析を通して、さまざまな可能性に気づいたという。現在は同社の動画コンテンツに“AIガール”として出演するほどの活躍ぶりだ。「AIという言葉は知っていても中身はちょっと…という人にぜひ知ってもらいたい」とK氏は語る。
前職で広報担当として活躍していた女性も、同社に転職してきている。出産〜子育てを経て、フリーランスとしての経験も積み、同社への転職という形で復職を実現させた。同社を選んだ動機については、「息子とAIについて話し合える母親、未来を語り合えるような母親になりたいから」と語っていたそうだ。
そんな同社は、『AMATERAS RAY』に続く新しいサービスのローンチを進めている。
上記の『AI女子育成プロジェクト』を発展させた『AMATERAS EDU』というAI教育ツールを、2020年1月から提供開始する予定だ。まずはトップ画面でAIへの興味・関心度についての診断テストを受け、ユーザーに合ったレベルからAIを学ぶことができる。『AMATERAS RAY』同様のシンプルな操作で、『AMATERAS RAY』を使いながらスキルを身につけていくコンテンツもあるとのこと。ターゲットの裾野は『AMATERAS RAY』以上に広い。
「実は『AMATERAS RAY』のほうも、今後は説明書を付けないようにする予定です。スマホ同様、より感覚的に使ってもらうことで、ファンを増やしていきたいと考えています」(西川氏)。
“AIの民主化”というビジョンは、更なる進化を遂げることになる。“親子がAIについて話し合い、未来を語り合える”。そんな時代を、aiforce solutionsはたぐり寄せようとしている。