ソーシャルイノベーションと新たなテクノロジーを活用して「言葉のカベ」を解消する。トップアントレプレナー達の挑戦
Kotozna株式会社は、訪日観光客向けの多言語翻訳サービスを提供するITベンチャー企業だ。観光施設や飲食店等の日本語文字情報に掲載された専用QRコードを、翻訳アプリ「Trip’nScan」で読み込むことで、利用者のスマートフォン環境に合わせた言語へ自動変換する。このサービスによって、訪日観光客が抱える「言葉のカベ」の解消と、地方経済活性に取り組む。
目指すのは、最先端のテクノロジーとソーシャルの力によって社会課題を解決する企業。行政や民間のさまざまなプレイヤーとタッグを組みながら、ベンチャー企業ならではの機動力を発揮。サービス拡大を一気に加速する。
創業者である代表取締役・後藤玄利氏は、2000年に健康食品・医薬品ECサイトの先駆けと言えるケンコーコムを設立。2004年に東証マザーズへ上場を果たす。20年に渡り、ケンコーコム株式会社の代表を務めた人物だ。また、共同創業者の取締役・神尾隆昌氏は、上流から運用まで一貫したIT系のキャリアが豊富なフルスタックエンジニア。数々の新規プロダクト開発に従事した後に、写真SNSアプリ「Snapeee」をリリース。アジアで20代女性に支持される人気モバイルコミュニティーへ成長させた。
確かな実績を持つアントレプレナーの2人が手を携えて、2016年に立ち上げたのが同社だ。なぜ、今までの事業領域とは違うインバウンドビジネスだったのだろうか?
「日本は、少子高齢化が社会課題となっています。地方都市では、それが顕著で元気が無くなっている。地方を成長させるには、訪日観光客を呼び込むことが重要です。しかし、そこには"言葉のカベ"という課題が立ちはだかっていました。そこをテクノロジーの力で崩したいと考えたのです」(後藤氏)
「地方創生は、本来行政が主導する領域。しかし、政府債務の増大や少子高齢化の加速により、行政では課題を解決しきれていないのが実状です。そこに、われわれの持つノウハウやITリテラシー、テクノロジーを組み合わせ、互いの強みを増強する。"営利と非営利のハイブリッドモデル"となる企業です」(神尾氏)
同社は更に、2018年9月18日にローンチしたばかりの新サービス「kotozna chat(ことつなチャット)」を主力事業として、来たる2020年までを第二創業期と位置付けてサービスの普及拡大および事業化を一気に進めていく。
※「kotozna chat(ことつなチャット)」とは、
『LINEとFacebookメッセンジャー、WeChatなど、異なるSNS同士でもつながれる。しかも、同時に100言語以上で会話ができるという、一見“夢のような”ツール...
『例えば、ユーザーが利用言語を日本語、SNSをLINE、会話の相手が利用言語を英語、SNSをメッセンジャーと選択した場合、ユーザーが日本語でLINEから送信した言葉が、相手のメッセンジャーの画面で英語で表示される...
引用:BUSINESS INSIDER JAPAN、Sep. 18, 2018)
写真SNSアプリ「Snapeee」を開発したフルスタックエンジニアだ。
QRが自動的に普及していくエコシステムを構築。圧倒的規模感での事業展開が強み!
これまでに手掛けてきたモバイルWEBサービス「Kotozna Camera」「Trip’nScan」は、同社が発行するQRコード「kotoZna QR」をスキャンすることで日本語文字情報を訪日観光客(スマホユーザー)の言語に変換する。飲食店や宿泊施設、交通機関等の「おもてなし事業者」へQRコードを無料で配布しており、2017年度には大分、福岡、佐賀、長崎といった北部九州の3,000近くの施設にQRコードを普及した。例えば博物館に収蔵されている名刀の解説や和食店のメニュー説明、地元百貨店のフロア案内等にkotoZna QRコードを添付することで、今まで日本語表記しかなく訪日観光客には理解しきれなかった情報が容易に多言語化できるようになったのだ。
同社は更に、2018年9月18日、100以上の言語に対応した「Kotozna Chat」をリリース。LINEやFacebook Messenger、WeChatなどバラバラに使われているメッセンジャーアプリ間を中継して、世界中の人と同時翻訳付きチャットを可能にした。このサービスの利用者は、自分のQRコードを相手にスキャンしてもらうことで簡単に同時翻訳チャットをスタートすることができる。
これらQRコードを活用したサービスは基本的に無料で提供しており、サービスを活用する「おもてなし事業者」のみならず、インバウンド拡大に関わる地元密着の法人や個人、商工会議所、NPO等が、おもてなし事業者に対してQR導入のサポートを行っている。創業から2年が経ち、この普及エコシステムが循環し始めたのだ。行政、おもてなし事業者、営利企業、訪日観光客、そして同社。相互がリンクし、相乗効果を発揮していく形だ。『ソーシャルイノベーション×テクノロジーで社会課題を解決する』というビジョンの意味するところが、この関係性に伺える。
QRコードを読み込み翻訳サービスを表示するという"枯れた技術"を使った、よくあるサービスに感じた者もいたかもしれない。しかし、想像して欲しい。kotoZna QRが社会インフラ化し、日本ばかりか世界中で当たり前となったならば。これほどの圧倒的な規模感を持って展開できる企業は、なかなかない。来たる2020年を見据えて、同社は新たなメインストリームを共に作ろうという人材を待っている。
いよいよ全国展開へ。さらに「Kotozna Chat」で見据える先は世界!
今後は北部九州での成功事例を持って、いよいよ日本全体へ向けて展開するフェーズに入っていく。2020年の東京オリンピック・パラリンピックでの多言語インフラとなることが、当然視野にある。そして「Kotozna Chat」をラインナップに加えて次のフェーズは世界へ。今まさに、第二創業期といえるダイナミックなタイミングを迎えている。
同社が求めるのは、どのような人物像なのだろうか?
「これという解がない中で、しっかりとした答えを作っていくことが求められます。答えのないものを追いかけることが楽しいと思える人がマッチするでしょう」(神尾氏)
「ライフスタイルやワークスタイルが、今までと大きく変わろうとしています。そんな時代の変わり目に、次の時代に役立つものであり、今はまだない新たなものを一緒に作っていきたい。このビジョンに共感する人に会いたいです」(後藤氏)
新たな世界に目を向け立ち上がったばかりの同社は、まだ少数精鋭の規模だ。会社のカルチャーは、これから集う人々によって自然と形作られていくだろうと両氏は語る。
今までに体験したことのない領域で社会の課題解決となる新たなサービスを、それもリアルな手触り感を伴ったものを作り出していける。この面白さとワクワク感は、何よりのやりがいになるだろう。
「階層がなく肩書もない。自由な中で力を発揮して欲しい。働き方は、それぞれの希望を聞いてフィットした形を取ることが可能です」(後藤氏)
個人の成長がそのまま会社の成長に繋がる。このタイミングは、またとないチャンスだ。