株式会社リビングスタイル

株式会社リビングスタイルは、インテリアに関するクラウドサービスとアプリを手がける会社だ。インテリア業界向けには、販売支援ツールとして、実際のインテリア商品の3Dデータを使ったコーディネート例が見られる3Dシミュレーターを展開。一般のコンシューマー向けには、AR技術を使って自分の部屋のインテリアコーディネートをシミュレーションするアプリ『RoomCo（ルムコ）』と、インテリア情報を発信するメディア、『RoomCo NAVI』を展開する。

3Dシミュレーターの導入実績は16社、21ブランドに上る（2018年2月現在）。無印良品をはじめIDEE、Francfranc、大塚家具など、大規模に店舗展開している有名なインテリアショップをほぼ網羅している。これだけ導入が進んでいるのは、明らかな効果があるからだ。リビングスタイルと導入各社による調査では、3Dシミュレーター利用時と非利用時を比較すると、顧客単価は2倍、成約率は1.5倍という数字が出ているのだ。

「通常、家具を買うまでに家と店舗の間を平均4回行き来すると言われています。設置する場所の幅は測っていても、奥行きを想定していなかったり…。これを繰り返しているうちに『面倒だからネットで買おう』となってしまいます。3Dシミュレーターは、この脱落を防ぐ効果があるのです」。こう説明するのは創業者で代表取締役CEOの井上俊宏氏だ。

3Dシミュレーターは、データはすべてクラウド上にあり、店員の手元のタブレットやインターネットの画面上で間取りを決め、買いたいアイテムを選んで配置すると、家具を置いた部屋の様子が3Dで表示されるというもの。好きな方向から見られるほか、あたかも部屋の中を歩き回っているように、画面上でウォークスルーもできる。

そして、3Dシミュレーターの技術と膨大な家具データを活かし、コンシューマーの視点に立って開発されたのが、アプリの『RoomCo』だ。「コンシューマーの方は、色々な会社の家具を横断的に検討したいはずです。このアプリを使えば、服を買うときに試着するように、自分の部屋に置くとどうなるかがわかります」（井上氏）。アプリをかざすと、AR技術により、自分の部屋が画面上に現れる。そこに実在の様々なメーカーの家具の3Dデータを置く。まさに自分の部屋に置いた状態を確かめられる画期的なアプリだ。もちろん、そのままECサイトで購入できる動線も用意している。アプリへは22ブランドが参加。既にアプリを入口に、ECサイトでの購入に至るケースも増えつつある。アプリはまだスタートしたばかり。今後は、メディア『RoomCo NAVI』との連携を深め、プロモーションに力を入れていく方針だ。

この画期的なインテリアの3Dシミュレーターは、井上氏が発案し、開発・リリースにこぎつけたものだ。世の中に類似のサービスはなく、まずは家具・インテリア販売の会社を訪問し、コンセプトを説明するところからスタートした。「当時、コネもまったくなく、代表番号を調べて電話し、説明したところ、8割方アポがとれたのです」と、井上氏は振り返る。この反応に可能性を感じ、さらに実際に訪問して話をするうちに好感触も得た。井上氏は早速、開発に取りかかった。

3Dシミュレーターのリリースは2008年末。すぐに、アイデア段階から関心を示していたunico（株式会社ミサワ）がクライアント第一号となった。今では東証一部上場企業のミサワだが、導入時は上場前で店舗数も10店舗程度だったという。その後、マザーズ上場を経て一部に移り、店舗数も拡大の一途だ。「もちろん3Dシミュレーターのおかげというわけではありませんが、マザーズ上場直後のIR資料では、3Dシミュレーターを特色として記載してくれるなど、微力ながらも成長の一端に貢献できたのではないかと思います」。（井上氏）

その後、導入企業はどんどん増えた。便利さと効果から利用をやめる企業はなく、また、サービス開始から10年近く経つ今も、目ぼしい競合サービスはない。その理由を、「見た目は同じように作れたとしても、使い勝手などに様々なノウハウが詰まっていて、容易に真似はできません。大量の家具の3Dデータの作成も、対応できるところはなかなかないでしょう」と、説明するのは、執行役員でCTOを務める園田一麿氏だ。家具の3Dデータは、実際の商品をあらゆる角度から写真を撮ってデータ化する地道な作業。この3Dデータの作成からシミュレーターの運用までをワンストップで手がける機動力も、同社ならではの強みとなっている。

アプリ『RoomCo』も、この大量の3Dデータがあって初めて成り立つものである以上、追随は難しい。同時に、AR技術をビジネスに活用している先駆的な事例でもあり、その希少性に着目した異業界も含めた各社からの協業や提携の話も尽きない。

また、メディアの『RoomCo NAVI』では、今後、プロの監修によるコーディネート例の紹介やコーディネート相談なども展開していく。そしてその先には、AIを活用したコーディネート提案も視野に入れている。このように、最新の技術を活かす「素材」があることが、リビングスタイルの何よりの強みだ。ゼロから3Dシミュレーターを生み出したように、今後も最新の技術を駆使して、世の中にない新しいサービスや価値を提供していく考えだ。

サービスのラインアップとして、BtoCの『RoomCo』と『RoomCo NAVI』、BtoBtoCの3Dシミュレーターを揃え、潜在的な関心層の掘り起こしからアプリ～ECサイトへ、あるいは実店舗へという人の流れを作るリビングスタイル。その見事なビジネス展開の描く未来像を、井上氏は次のように語る。

「かつて、ユニクロ以外のアパレルをネットで買うなんて思いもよりませんでした。ところが『ZOZO TOWN』が登場し、ネットで服を買うという行動が一般的になりました。我々もインテリア領域における『ZOZO TOWN』のように、ネットでインテリアを買うという新しい行動を生み出し、根付かせる存在になりたいと思っています」。値段が上がるほど、eコマースへのハードルは高い。だが、服を試着するようにインテリアを試せる技術を開発した今、この新しい価値観、新しい行動様式を広めることも夢物語ではない。よりユーザーに寄り添ったサービスを提供することで、変革を起こす存在となる決意だ。

新たなサービスや体験を打ち出すリビングスタイル。「ゲームやアパレルなど、他業界のビジネス展開やアプリを参考に、それをインテリア業界に持ってきたら何ができるかと考えています」。と、園田氏は開発の秘訣を語る。さらに「これから仲間になる人も、これとこれを組み合わせたらどんなサービスが生まれるかと考え、実行できる人であってほしい」とも。新しい何かを生み出し、それが世の中を変えていく。他社との協業で、さらにおもしろいこともできるかもしれない。リビングスタイルの仕事にはワクワク感しかない。

クライアントには、無印良品（株式会社良品計画）のように海外展開に力を入れている企業もある。彼らを支援する形で、3Dシミュレーターの多言語対応も進めていく計画だ。この画期的なサービスが、海外の店舗でも使われる日は近い。ITの力でインテリア業界を変えていくリビングスタイル。これからもオンリーワンであり、ナンバーワンの存在であり続ける。同社で働くやりがい、手応えは極めて大きいだろう。少数精鋭の同社において一人一人の存在は重く、これから入る人への期待も大きい。ともに挑戦する仲間を待っている。