株式会社ISLWARE

システム開発会社の、株式会社ISLWARE。事業領域は、Web／オープン系のシステム開発、企業情報システムの運用・保守、映像ソリューションサービス（システム開発・制作支援）の3分野だ。

現在、直接取引をしている2社のクライアントで、売り上げの90％以上を占めている。1社は、ポストプロダクション（映画などの撮影後の作業工程）最大手の企業グループ。もう1社は、賃貸保証のパイオニア企業。
「従業員数15名の当社のような規模のシステム開発会社が、このような業界最大手企業と直取引して安定的な経営基盤を構築できているのは、珍しいケースといえるかもしれません」と代表取締役の松村一彦氏は胸を張る。

賃貸保証会社からは、エンドユーザーの申し込み、審査、契約、代金回収という事業の基幹業務システムの保守・運用を10年以上にわたって任されている。「システムダウンは即、業務ストップに直結する重大な責任を担っている」と松村氏。運用だけでなく、成長を続けるクライアントの新サービスに関わるシステムの新規開発を手がけることも少なくない。
「クライアントのシステム部門にはプロパーの社員もいますが、古くから関わっている我々の方が熟知していることもあって、当社社員に相談が来るケースが多いです」。（松村氏）

ポストプロダクション企業グループにおいては、映像データのファイルマネジメントシステムやフォーマット変換アプリケーションの開発といった映像制作に関わる専門領域を手がけている。
「映像の世界も進化スピードが速く、最新機器が次々と登場しています。そういう動きに併せて新しい案件が続々と寄せられており、映像システム領域の最先端に触れられる面白さがありますね」。（松村氏）

また、受託開発や保守・運用だけでなく、自社製品もある。これまで、映像コンテンツエンコード管理システム「CamsWare」、SDカードにコンテンツを埋め込んで簡単にガラケーに抜き差しできるようにした「SD-Videoソリューション」、ターゲットの日時までをカウントダウン表示し、限りある時間の大切さを再認識できるAndroidアプリの「逆時計」をリリースしている。

2006年12月に設立され2007年4月に事業をスタートさせた同社は、丸10周年を迎えている。社名のISLWAREは、企業名の“Imagica System Land”の頭文字と、知的・芸術的創造物を表す“Ware”からつくられた。その“ISL”が、同社のオリジンなのである。

株式会社IMAGICAシステムランドは、1990年に日本のポストプロダクション最大手である株式会社IMAGICAのシステム部門が分社化して設立された。ところが、2006年にIMAGICAがCM制作大手の株式会社ロボットと経営統合し、将来の上場を目指して持株会社体制に再編された際、売上規模が小さかったISL社はグループから切り離されることになったのだ。
「その前から、賃貸保証会社などの取引先と18名のエンジニアを抱えていました。業務継続を望むメンバーが多く残るなら、業務ごと独立する選択肢もあると考えて意見を聞いたところ、10名が『責任もってこのまま続けたい』と言ってくれたのです。そこで、当社を設立することにしました」と松村氏は振り返る。
そのような経緯から、IMAGICAシステムランドのDNAを継承する企業として、ISLの名前とロゴを使うことにしたのだ。

設立後、急速に業務が増えるとともにエンジニアの採用を急ピッチで行い、ピーク時には19名まで倍増させる。
「ところが、急ごしらえであったためにメンバーのベクトルが合わず、まとまりを欠いたチームとなってしまいました。そうしたことも災いし、大規模案件のプロジェクトマネジメントに失敗してしまったのです。その反省から、今では当社の企業風土に合う人材を慎重に選んで採用しています」。（松村氏）

失敗したというプロジェクトは、納期を遅らせてしまいながらも納品し、信頼を回復してその後の運用も任され続けている。そのトラブルで3分の2の社員が抜け、残った社員が現在のコアメンバーとなっている。こうした経験は、同社の体質を強くする大きな要因となっているようだ。

そんな同社の課題は、受託に加えて自社プロダクト/サービスを、もう一つの経営の柱に育てること。松村氏は次のように言う。
「これまでリリースした自社製品は、受託案件が増えて思うように育てることができていません。そこで、業績好調ということもあり、エンジニアを増員して全体的に自社プロダクト/サービスも手がけていける余裕をつくりたいと思っています。ぜひ当社の話を聞きに来てください」と松村氏は呼びかける。

15名のメンバーは、松村氏以外全員エンジニア。基本的に、基幹システムの保守・運用を任されている賃貸保証会社や、特殊な機材のあるポストプロダクション企業グループに駐在して業務に就いている。
「チーム単位で駐在し、個人個人の課題を明確にしながら業務を行っています。派遣ではなく受託なので、持ち帰れるものは自社で作業をしています。受託開発は、派遣とは違う責任の重さを感じますね。直請けですから、お客様からダイレクトに厳しい言葉をいただくこともあれば、喜ばれることもあります。それがメンバーの励みや成長の機会となっていますね」。（松村氏）

月に1回、全員が本社に集まり、会社の経営状況や各プロジェクトの状況、技術情報などを共有。その後は懇親会を会社の費用負担で行っている。「強制はしていないが、全員参加してくれている。そういった機会を使って、自社製品の話も進めていきたい」と松村氏。Androidアプリ「逆時計」は、社員が自主的に開いた勉強会を契機に生まれた。勤務時間を終えた後や休日に集まって開発作業をするメンバーを、会社としてランチ代や飲み代を負担して応援。リリース後、上がった収益は開発に参加したメンバーで山分けした。
「そんな機会をこれからもできるだけつくっていければと思っています」。（松村氏）

真面目で、好奇心旺盛なタイプが多いという同社。
「この仕事は、長く続けてこそわかる面白さがあります。ですから、ぜひ当社で長く続けてほしいと願っています」と松村氏は新しい人材に期待を寄せる。