“高級感”“サービス力”“集客力”に強み。システム化にも注力!
京都の町家や古民家をゲストハウスとして“一棟貸し”するビジネスを手がけている、株式会社トマルバ。ビジネスモデルとしては、オーナーを見つけて空き家をリノベーションし、自社ブランド「宿ルKYOTO」として運営するビジネスのプロデュースと、既存物件の運営代行の2通りがある。いずれも同社は物件を所有せず運営に徹する、いわば“古民家版・星野リゾート”を目指している。2017年6月現在、「宿ルKYOTO」は1カ所(「和紙ノ宿」)、運営代行は9カ所を、いずれも京都市内で手がけているところだ。
「当社は、『“暮らすように泊まる”を当たり前に』というビジョンを掲げています。特に海外のお客様には、日本の古民家に泊まり、キッチンで地元の食材を使って料理するなどして“和”の暮らしや文化の良さを感じていただければと思っています」と、取締役の山田真広氏は話す。
競合する事業者はいくつかあるが、同社が強みとする差別化ポイントは次のとおり。
①高級感……リノベーションにはコストをかけ、家具や備品、アメニティ類は全て高級品を使用。
②サービス力……CRMシステムを導入し、リピーターには「いつもご利用ありがとうございます」などと丁重に対応するほか、スマートロックや入退室感知センサー、エアコンのリモートコントロールなどで快適な滞在を提供。また、観光案内や生活相談などのコンシェルジュサービスも完備。駅から宿への車での送迎も行う。
③集客力……他社はどこも同じOTA(オンライン旅行サイト)管理ツールを利用し、同様のOTAに掲載しているが、同社は他社に知られていない海外の有力管理ツール会社と提携し、50以上の世界のOTAに唯一掲載。かつ、API連携によりWブッキングを防止(1棟貸しの場合、Wブッキングとなると他の部屋を振り向けることができず、キャンセルが余儀なくされる)。その関連で、Airbnbとも国内事業者として初のAPI連携を果たしている。
なお、同社はユーザー向けのサービスシステム(ボタン1つでタクシーが呼べる、仕出し弁当が頼める、など)や、自社の販売管理ツールなどシステム化に力を入れている。
「集客や顧客管理に困っているゲストハウスや旅館への外販も考えている」と山田氏は言う。
2020年度までに日本全国で1000カ所の古民家を稼働させ、“日本一”を目指す
その山田氏は、学生時代から起業を志し、卒業後は有名店のラーメンを通信販売する「宅麺.com」というベンチャーで働く。そこで飲食ビジネスに魅力を見出し、いざ独立、というタイミングで、現・トマルバの代表取締役社長兼CEOの芦野貴大氏と出会う。芦野氏の「海外で流行っていたファストデリバリーの日本版をやる」という構想に意気投合、2014年7月に株式会社ヤミー(現・トマルバ)を創業する。渋谷を拠点に、オフィスにヘルシー弁当を宅配ピザより早く届ける「渋弁.com」をスタート。話題を呼んだものの、競合が続々参入し、ついにLINEが「LINE WOW」で参入。やむなく撤退に追い込まれる。その後、有名投資家との縁でオークションやWebメディア、動画によるECなどを手がけるも、鳴かず飛ばずの状況が続いた。こうして、2015年末にゲストハウスを運営するシェアリングビジネス辿り着く。これがインバウンドの急増を背景にヒット。
「新宿を中心に、ピーク時は50カ所ほど運営していました」と山田氏。すると、次に2人の視界には、京都の街並みに溶け込む町家が魅力的に映った。金沢出身の山田氏も、芦野氏も京都に残る歴史的な生活文化や雰囲気に引かれたという。そして、シェアリングビジネスを売却し、2017年3月に活動拠点を京都に移して、社名も「トマルバ」に変更し現在のビジネスに着手する。この事業に転じた理由や意義を、山田氏は次のように説明する。
「観光立国を目指す日本はインバウンド強化に取り組み、日本観光の中心地である京都に宿泊する外国人は、2014年の183万人から2015年には316万人と1.7倍以上に伸びています。2020年には4000万人、2030年には6000万人を目指しており、今後ますます増加が見込まれています。そのおかげで、京都の宿泊施設の稼働率は90%以上で、日本一不足しているエリアとなっています。その一方で、空き家が増加しているという問題があります。空き家となっている古民家を再生し、宿泊施設として提供することを通じて日本文化のよさを体感してもらうビジネスは、“一挙三両得”を実現させる社会的貢献度が非常に高いものと自負しています」
同社では、2017年度(2018年3月末)中に最低50カ所の京町家を稼働させ、まずは“京都一”を目指す。次に、2020年度までに日本全国で1000カ所の古民家を稼働させ、“日本一”を目指す。
「日本の古民家で日本一は、すなわち“世界一”でもある(笑)」と山田氏は強調する。
“3つのバリュー”が経営の柱
同社の経営の柱となっているのは、次の“3つのバリュー”だ。
●MOVE FAST(素早く動く)
失敗を恐れず、今までの常識を破るチャレンジを誰よりも素早く動いた人間が一番賞賛される。
●All for One (チームプレー)
当社では、一人ひとりに「●●だけ」などと固定の仕事だけをやればよいという指示はしない。あらゆる仕事がある中で、部門の垣根を超えてチーム全体の目標達成のためにチームプレーができる人間かどうかを重視する。
●BE PROFESSIONAL(プロフェッショナルであれ)
常に思考を続け、説明でき判断できるようになり、その判断に対して責任を持ち、ベストを尽くすのがプロフェショナルだと考える。
同社では、人事評価もこの“3つのバリュー”をベースに行い、その上で個別の業績を評価する。
「どれだけ高い業績を上げようが、その方法がチームプレーにもとる行為でなされたものであるのならば、評価はされません。それほど“3つのバリュー”を大切にしています」と芦野氏は話す。
社員へのマネジメントポリシーは、「とにかく裁量を持たせて任せる」と山田氏。「成長するには、失敗をしてもいいから経験を積んでもらうことしかないと考えています」
前述のとおり、創業者コンビはいくつも失敗を重ねて成長できたとの思いが強くあるからだ。したがって、求める人材像も「事後報告でも構わないぐらいに、主体的に動ける人」と山田氏。“自助成長”できる人には思う存分、ステージが提供される環境が同社にはある。
「とはいえ、芦野も私もすぐ近くにいて、いつでもアドバイスができる体制にあります。そこは安心して飛び込んで来てほしいですね」(山田氏)
チームとしての一体感を高めるためにも、花見やBBQなどを全員で楽しむ機会をつくるという。
成長が見込めるフィールドで思い切りビジネスにチャレンジし、その結果、社会貢献にも繋がることが実感できる。特に京都の街並みや日本文化が好きな人は、チェックすべき募集に違いないだろう。