『ゲーム発展国++』『ゆけむり温泉郷』『お住まい夢物語』などのシミュレーションゲームが代表作!
スマートフォン向けのオリジナルゲームをリリースしている、株式会社カイロソフト。
2017年3月現在、リリース中のタイトルは35作品。代表作は『ゲーム発展国++』(日本App Store 有料アプリカテゴリ DL数 第1位)、『ゆけむり温泉郷』(Google Play カジュアルゲームカテゴリ 販売本数 第1位)、『お住まい夢物語』(世界的に500万ダウンロード)など。お店などの経営やチームの運営、育成などのシミュレーション物が多い。
同社は、2007年の会社設立から10年経った今日まで、このスタイルを守り、10代、20代の新しいファンを獲得しつつ、40代以上の昔からのコアなファンも存在するユニークな存在だ。日本語版だけでなく、英語や中国語、韓国語、タイ語版もあり、世界中にファンを広げている。売上は国内と海外が半々となっている国際派企業の一面もある。ここに同社の強みがあるといえるだろう。
「自分もなってみたいなぁ」「運営してみたいわぁ」と思うような身近なテーマで、オーナー感覚が味わえるようなストーリーが多く、他にはないテーマを意識している。最近ではRPGやパズル物なども出しており、幅は広げている。
「ファミコン」や「スーパーファミコン」時代を彷彿とさせるような“2D”や“ドット絵”、“クォータービュー”といったゲーム開発を得意としている。その理由について、代表取締役は次のように説明する。
「ふっふっふ、比較的簡単につくれるからだよ。当社では、基本的にデザイナーとプログラマーがペアを組んで1つのタイトルを開発します。2人で1タイトルを開発しきることで、『自分がつくっている』という感覚を持ちやすくなります。3Dによる高精細のゲームの場合、大人数の分業体制で開発しますので、作り手はどうしても『一部しか手掛けていない』という感覚に陥りがち。2Dのドット絵には遊ぶ人の想像力が入る余地があり、世界で数多くのファンもいます。この最小ユニットの作り手が『つくりたい!』と思うゲーム開発の全工程を思う存分手掛けるスタイルにしたほうが、面白いゲームができると確信しています。たぶん」
短期的な収益性よりも、ゲームとしての面白さを重視しているよ
子どものころから「ファミコン」や「スーパーファミコン」に親しんできたU氏は、「小学6年の時に、親にパソコンを買ってもらったことが原点になった」と述懐する。
当時、パソコン雑誌にはBASICでプログラミングされたゲームのソースコードが掲載されており、U氏はこれを教科書にゲームづくりを始める。そして、14歳の時に第1作目のパソコン版『THE古本屋』を公開。その数カ月後に『ゲーム発展国++』の前身となる『ゲーム発展途上国』を発表すると、アスキーのパソコン誌『テックウィン』で大きく紹介されて賞金をゲット。以来趣味として大学卒業までパソコンゲームを5~6タイトルつくっては公開してきたという。
大学卒業後から個人事業としてビジネス化し、2007年、25歳で株式会社カイロソフトを創業する。
「14歳の頃から今日まで、基本的にゲームの開発ポリシーやスタイルは不変です。時代の変化に乗って新しいスタイルに変えるのではなく、あえて同じことをやり続けてきました。今後も同じ軸で運営していきます。それが、ゲームの世界で当社が生き残る方法と思う気がするぅ~」と、ゲーム業界の栄枯盛衰を見届けてきたUさんは言う。
同社のゲームビジネスモデルは、1タイトル数百円でダウンロードしたらそれで終わりというシンプルなものが多い。
「もぐもぐ…シンプルに面白いゲームをつくって楽しんでもらえばいいなと思ってます、ゴクリ。だから自分たちの手で面白いゲームをつくることにこだわり、10年続けてこられたと思っていま…このポテチ美味しいね」と強調する。
面白いゲームをつくるために、メンバーの“作家性”を大切にする風土。
新作の企画は「つくりたいゲームがある」という人なら誰でも出すことができる。基本的に1つのタイトルをつくり終えた人が、インターバル休暇を挟んで、いつ頃までにどんなゲームをつくりたいのかを協議。面白くて商業的にも成功しそうと感じたらGOサインを出すパターンで行われている。必然的に、発案者がディレクターを兼ねることになる。
概ね半年ごとに1タイトルというペース。前作に8カ月かけたから次は4カ月でできるものを、といった経営上の調整をざっくりするぐらいで、基本的に開発スケジュールやプロセスはディレクターに一任している。もちろん、ディレクターとペアを組んでデザインやプログラミングに徹することもできる。特に組織化しておらず、開発体制は極めてまろやかだ。
開発に際しては、例えば競馬のゲームなら競馬場、動物園のゲームなら動物園に勤務時間中に足を運んで研究するといったこともできる。
「面白いゲームをつくる風土づくりとしては、メンバーの“作家性”を大切にし、締め付け過ぎないことを心がけています。人間ですから、気分が乗らない日もあるでしょう。そういう状況も認めて、結果で評価するようにしています。僕もね」
社員は、だいたいゲーム開発が大好きで、目の前のゲームづくりに静かに集中するというタイプの人が多い。そうしたキャラクターを尊重して、会社が主催する親睦の機会はクリスマスの日に軽く自由参加のピザパーティーをする程度。社員教育の機会なども特に設けず、社員が必要とする資料やイベント参加などに会社が費用を負担する形だ。過去の全タイトルのプログラムやBGMなどのデータを社員がすべて閲覧できるようにしており、新人などはそこでじっくり学ぶことができる。なお、新人には、1カ月の時間を与えて自由にゲームをつくってもらうこともあるという。
「その作品に、本人の個性が丸出しになります。その個性をできるだけ生かす形で、その後のタイトル開発に就いてもらうようにしています。丸出しです」
自分の世界観を持ち、流行に流されず「面白いゲームをつくりたい」という熱意のある人を求めている同社。一タイトルのすべてに思う存分関わりたい人には、見逃せないだろう。