目指すは、“世界のバリ問題を完璧に解決できる会社”
金属やプラスチック部品などを製造・加工する際、不要な突起部分の“バリ”ができる。バリが残ったまま機械加工や組み立てなどを行おうとすると、“正確に固定できない”“部品を正しく計測できない”“作業者のケガや事故に繋がる”などの弊害が発生する。したがって、バリは必ず除去する必要がある。
株式会社ジーベックテクノロジーは、このバリを除去するツールにおいて、セラミックファイバーを用いた革新的な製品を開発・販売しているメーカーである。デンソー、アイシン精機や三菱重工業、GE、ボーイング、アップルといった国内外のトップメーカーはじめ約2万社の製造業を顧客としており、売り上げの3分の2は海外が占めている。2013年12月には、NHKのテレビ番組でも取り上げられた。
同社が設立されたのは1996年。東証一部上場会社で役員を務めていた住吉毅彦氏が、友人が開発したセラミックファイバーを用いた金型研磨用砥石を製品化するために独立し創業した。
砥石は、成分の85%を占めるキーファクターの素材が性能を左右する。そこで、素材のトップメーカーと提携し、製品開発および事業化を進めていった。そうした中、2002年に現在の主力商品となっているバリ取り・研磨を自動化出来る「XEBECブラシ 表面用」を開発。用途開拓と海外展開を進めていった。
毅彦氏の長男である住吉慶彦氏(以降、住吉氏)が入社したのは2005年。経営者となることを志望していた住吉氏は、三井物産でベンチャーを立ち上げ戦略担当取締役として活躍後、ベンチャーキャピタルに転じて投資先とともに自身が経営者として就任できそうな会社を探していた。
「当時、父は他界していて2代目の社長が就任していました。その社長から海外営業員として入社を要請されたのです。父は同族経営を嫌っていたので、それまで入社することなど意識していませんでしたが、この機に改めて当社を調べてみました。すると、まさに私が経営したい会社の要件を満たしていたのです」
そして、2007年に3代目の社長に就任。さっそく住吉氏は課題に感じていた人材の強化に着手した。
「以来、人材採用では毎回、私が1次面接から行っています。年間200~300人にお会いしていると思います。その中から2~3人を厳選採用し、現在、16名の少数精鋭集団をつくりあげることができました」と住吉氏。
そんな同社が目指すのは、“世界のバリ問題を完璧に解決できる会社”。住吉氏は、次のように呼びかける。
「全世界のバリに関する問題のうち、現在の当社が解決できるのは5%程度と見ています。これを100%にするために、既成概念に捉われない製品開発やマーケティングが必要です。そのために、違った視点を持った異分野の精鋭を増員したいと思っています。ぜひアクセスしてください!」
気さくな人柄が印象的。自社の魅力を事業面、組織面から語ってくれた
バリ取りを手作業から解放した革新的な製品
精度の極めて高い工作機械に剛性のドリルやバイト、ミルなどの切削パーツを装着して加工すれば、バリはできない。しかし、現実的にそうした環境はほとんど存在していない。切削パーツの切れ味がいいうちはバリが出なくても、じきに摩耗し切れ味が鈍るからだ。したがって、バリのでき方は一様ではない。そこで、バリ取りは多様な状況に最も対応しやすい手作業で行われてきた。こうした手作業用のツールを提供するメーカーは数多く存在している。
「本製品を傷つけてはいけないので繊細さが要求されますが、単純作業に違いありません。当社は、これをどうにかして自動化できないかと考え、開発したのが、画期的な『XEBECブラシ』です」と住吉氏は言う。
従来の研磨・研削ツールは、“砥粒”を固めたものが用いられてきた。粒なので非連続であり、研磨・研削は一定しないという欠点があった。そうした中にあって、『XEBECブラシ』の研磨・研削材は、直径数μのセラミックファイバーを1000本まとめてバインダーで固め、1本の線材としたもの。線材なので、摩耗しても常に新鮮な切断面が連続するので研磨・研削を一定の状態で行うことができる。
このブレイクスルーと、あらゆる工作機械への取り付けを可能とすることにより、『XEBECブラシ』はバリ取りを手作業から解放したのだ。
「バリ取りツールをドリルやバイト、ミルと同様に取り付けることで、一つの工作機械内で加工とバリ取りを自動的に行うというソリューションを開発したのです。特許も取得しましたが、これをほかに行える同業社は存在していません」と住吉氏は胸を張る。
こうした独自性へのこだわりは、製品に対してだけではない。例えば名刺は、印象的な顔写真と製品写真を大胆にデザインした2種類を用意している。製品の展示会では、各ブースを回って大量の資料を入手する来場者(潜在顧客)のために、社名ロゴ入りの段ボール製カートをつくって贈呈した。
「紙のカタログは重いでしょう?(笑)。マーケティングでも、こうした工夫には徹底的にこだわりたい。そして、“ジーベックは違う”という強烈な印象を与えたいんです」と住吉氏は力説する。
社是は“Enjoy Life, Enjoy Working with XEBEC.”
この「Green」で求めるWebマーケティング担当者にも、住吉氏は「既存のWebマーケティングを超えた斬新な手法を打ち出してほしい」と期待する。
「この業界では、ITの活用は思い切り遅れています。そうした中で、当社の製品の魅力と事業を十二分に理解した上で、この画期的な製品開発や営業担当の市場開拓努力を増幅して世界に発信するマーケティング戦略を企画・実行してほしいのです」
そのためには、採用したWebマーケティング担当者にも営業を経験してもらうという。どんな現場でどのように使われ、どういった価値を発揮しているのかを実感し、感じたことをメッセージ化するためだ。
「求める人材像は、いわば“大局観のある現場主義者”ですね」と住吉氏。戦略を立案し完成させるまでは、試行錯誤が必要だろう。そのプロセスでは、いくつものプロトタイプがつくられるはずだ。
「そうしたものをちょこちょこっとつくり、意見を吸収したら素早く修正する。そしてフィニッシュは外部の専門家をアサインしてマネージし、完成度の高い成果物をモノにする。そんな動き方ができる人が理想です」(住吉氏)
総勢16名の同社は、住吉氏が“社長 兼 経営戦略部長”といった位置づけだ。住吉氏は、自身のマネジメントスタイルを次のように説明する。
「私に決裁を求める際は、いくつかのオプションとともに自分が決定したプランについて承認を得る、というスタイルを要望しています。私に決定を仰ぐような姿勢は一切認めません。なぜならば、自分が意思決定することで、やり切る覚悟と責任感が生まれるからです」
住吉氏が厳選した16人のメンバーは、“鶏口となるも牛後となるなかれ”という考え方で大企業を飛び出した精鋭たち。そんな集団を、“Enjoy Life, Enjoy Working with XEBEC.”という社是で束ねている。
「生活時間の中で最大の就労時間が楽しければ、人生は自ずと楽しくなると思います。だからこそ、先に“Life”なのです」
こうした考え方で、オフィスにもこだわっている。窓からは皇居が見下ろせ、その森の先には丸の内の高層ビル群が眺められるという絶好のロケーションだ。
「この物件を見つけ、すぐ近所から移転しました(笑)。バリ取りという単純作業からお客様を解放し、生活の質を高めていただく。その使命を追求する我々の生活環境も、志を醸成する場所でなくてはならないと思っているからです」
ニッチなマーケットであるが、唯一無二のプロダクトを擁して世界制覇を果たしていく。これほどエキサイティングな会社もそうはないだろう。
新しく入るメンバーには、世界に発信するマーケティング戦略を企画・実行を期待している