顧客から「よくここまでつくったね!」と言われる製品をつくる
主に製造業に向けた生産工程管理システム『DIRECTOR6』(ダイレクター6)や、ペーパーレス「現場帳票」記録・報告・閲覧ソリューション『ConMas i-Reporter』などの自社パッケージ製品を開発・提供している株式会社シムトップス。
社名の由来は、1991年の設立当時注目を集めていた「CIM:Computer Integrated Manufacturing=コンピュータを活用した生産効率化」の分野でトップになるという意志を表している。同社は、高度な技術力で知られる金型加工メーカーのツバメックスと、鉄鋼関連や情報・電機関連、産業資材関連などの専門商社である岡谷鋼機が出資して設立された。以来、社名の由来のとおり、ITを活用し製造業の生産現場の支援に特化した商品・サービスを提供している。
「ERPなどの業務系のパッケージはいろいろな製品がありましたが、生産現場を支援する業務管理システムはほとんど製品化されていなかったのです。工場などの生産現場では、それまで熟練工の経験と勘を頼りとする管理が主流を占め、システムによる管理が馴染みにくいという要因があったためです。システム製品化は面倒で、大手のITベンダーはやりたがりません。そこに着目し、徹底的に生産現場に向き合って個別受注生産向け生産スケジューラー・工程管理システムの『DIRECTOR』を開発しました」と代表取締役の水野貴司氏は製品開発の経緯を説明する。
同社の製品開発ポリシー、事業フィールドのポジショニングは、「誰もやっていない分野」で「世の中にないモノ」を「独自開発」して「大手企業を中心に」提供するというニッチトップ戦略。
「絞り込んだ分野で、お客さまから『よくここまでつくったね!』と言っていただけるような圧倒的な品質レベルの製品を提供することが当社の事業方針です」と水野氏は強調する。
「日本の製造業向けの業務管理ソフトならば間違いない」という信頼性
『DIRECTOR6』は、個別受注生産における、「日程」「負荷」(計画スケジューリング)、「進捗」「実績」(作業実績進捗管理)、「原価」(コスト管理)の“見える化”を行い、引き合い段階のシミュレーションから受注・設計・製造・組付・納入までに至る効率的な工程管理を行うシステム。リードタイム短縮、コスト削減、生産効率の向上などに効果を発揮し、個別受注生産現場が抱える問題解決に貢献する。ユーザーは約200社に及び、うち8割はトヨタ自動車、デンソー、三菱重工業、三菱電機などの大手企業が占めている。
「量産品の生産現場よりも、専用の製造装置など一品ごとに設計・生産する現場に向いています。カスタマイズはほとんどありませんが、導入カリキュラムを用意して3~5カ月間かけて導入のサポートを行っています」(水野氏)。導入後もきめ細かい保守サポートを通じて顧客と長い取引関係を構築しているのも強みだ。
同社が今、力を入れて推している新製品が『ConMas i-Reporter』。これは、iPadやiPad miniを使用し、デジタル入力と手書きを融合させた全く新しい「現場帳票」の 記録・報告・閲覧が行えるソフトである。
生産現場では、様々な「記録」を残している。何か不具合が生じると、その現場写真を撮影し不具合の状況を記録し、後で報告書にまとめるといったことが日常的に行われている。これまでそのほとんどはEXCELなどで作成した帳票に手書きした後でシステムに再入力する形で行われていた。手袋をはめ、製造機械を操作するような現場でいちいちパソコン画面に入力するといった作業が馴染みにくいためである。しかし、そのようにシステム化されていないことにより、記入ミス、二重入力、チェックの手間、煩わしい紙の保管・管理といった問題が生じていた。
そこで、日頃使い慣れたEXCEL帳票をそのままiPadの電子帳票にし、手書き紙帳票の良さを残してデジタル化・ペーパーレス化したのが『ConMas i-Reporter』である。これにより、ペーパーレス化・入力工数削減によるコストダウン、ミスの削減・スピードアップなどによる業務の効率化、業務品質・情報精度の向上といった効用をもたらしている。
さらに、従来の生産工程から一つ上流の設計工程を助けるエンジニアリング支援ツール『MPPC』も製品化した。これは、大手重工業メーカーの生産ラインの設計工程支援ツールを共同開発後、パッケージ化したものだ。
「他社にも使ってもらうことでよりよいツールになれば自社にも恩恵がある、というお客様の素晴らしい考え方で実現できました」と水野氏。
これらの同社製品の販売は、同社ホームページなどへの問い合わせによるインバウンド型が主流となっている。
「困っているお客様が検索して当社を見つけてくださるケースが非常に多いですね。また、最近では製造業向けの展示会に外食産業チェーンや物流業、建設業などの企業担当者もよく足を運ぶようになり、そこで商談につながっています」と水野氏は説明する。「高度なレベルの品質が厳しく要求される日本の製造業向けの業務管理ソフトならば間違いない」という信頼性があるのだ。外食産業や物流業、建設業の現場も製造業同様の工程管理が求められており、同社はより広大なビジネスフィールドを開拓していく構えである。
海外展開も現在の中国・上海の子会社に加え、今後アメリカや東南アジアにも広げていく。
「現場の業務の効率化、生産性の向上のニーズに国境は関係ありませんので、十分チャンスがあると考えています」と水野氏は意気込む。
自分の手がけたものに対する評価を顧客から直接聞ける
同社のエンジニアは、主に既存製品のバージョンアップを担うことになるが、自社にこもって業務に取り組んでいるわけではない。水野氏は次のように説明する。
「当社には導入時のインストラクションを手がけるスタッフはいますが、導入作業や導入後のサポートはエンジニアが担当し、お客様と直接やりとりしています」。
その背景には、ユーザーから直接製品に対する意見やニーズを聞くことで、製品のブラッシュアップや新製品開発に対するモチベーションを高めるねらいがある。
「自分の手がけたものに対する評価をお客様から直接聞けることは、開発者にとっては何よりのやりがいや励み、自己研鑽の材料になると思います」と水野氏はその効用を語る。
ちなみに同社は年俸制で、実力主義の企業風土だ。
「自分が仕事しやすい環境をできるだけ自由につくれる裁量を与えています。エンジニアに気持ちよく仕事してもらいたいからです」(水野氏)。
そんな同社が求めるエンジニアは、上記のように顧客とのコミュニケーションにも積極的であることに加え、自分の技術にこだわりがあり、新しいことにもどんどんチャレンジしていける人。その理由を水野氏は次のように説明する。
「ITの世界は進化スピードが非常に速いので、新しいことに次々にチャレンジしなければ陳腐化してしまいます。また、そうやって自分のスキルアップの努力を怠らない人は成長志向があるということ。自信満々の人より『自分はまだまだ』と言う人のほうが得てして優秀なのは、成長意欲に違いがあるからだと思います」。
特定の分野を深掘りし、ハイレベルの品質にこだわりながら自社製品の開発を手がけたい人にとって、同社はまたとない環境といえよう。