【Monaca】や【Onsen UI】のプロダクトを創出/顧客は大手企業多数!/GoogleのPWAに登録/ハンガリーやアメリカでの事業展開
自社製品の開発【Monaca】【Onsen UI】、エンジニアのためのスクールやポータルサイトの運営、講演や執筆、Webシステムの受託開発など、アシアルの事業は幅広い。会社案内やWebサイトでも一見して何の会社かと迷うほどだ。だがいろいろと手がけているようで、根底に流れるものは共通している。「我々が目指しているのはエンジニアリングでインターネットの成長を牽引することです」。こう語るのは同社の創業社長である田中正裕氏だ。
お客様が実現したいことを技術でサポートする。お客様の要望に応じて提供するものはスマートフォンのアプリもあれば、企業の基幹システムもある。「お客様」は会社のこともあれば、個人のこともある。製品ありきではなく、技術ありきでそれを活かせる場面がすべてアシアルの事業領域となる。技術を囲い込まず、スクールやWebサイトなどを通じて積極的にオープンにすることで、そこで同社の技術を知った人や会社が同社に相談する。そこから開発案件などの受注につながるという形で、一見バラバラに見える事業はすべて循環しているのだ。
たとえば同社の代表的なプロダクトである【Monaca】は、HTML5ハイブリッドアプリを開発するための日本を代表する開発プラットフォームだ。利用者の大半はシステムインテグレーターやスマホアプリの開発会社で、アシアルにとっては競合会社にあたる。アシアルがスマホアプリの実績を積むなかで培ってきた技術を惜しげもなく公開しており、いわばライバルに手の内を明かすような形だ。しかしここでアシアルという会社を知った人や会社が、いずれ事業のパートナーとしてアシアルを選んだり、あるいは一緒に働く仲間になったりすることもあるだろう。
「ここまで技術をオープンにする会社は珍しいと思います」という田中氏。この手法で受託案件が途絶えることはない。会社案内の実績紹介のページにはテレビ朝日、マネックス証券、三井住友フィナンシャルグループ、アシックスなど大手企業の案件がズラリと並ぶ。この循環がうまく機能している何よりの証拠だろう。会社は創業以来、黒字が続いている。
技術力とは社員そのもの。多様な価値観を認め、互いに高めあう
そんなアシアルの強みはもちろん技術力だ。では技術力とは何か。「社員そのものです」と田中氏は即答する。会社の技術力とは社員一人ひとりの頭の中に蓄積されるものの総体だ。一人で会社を立ち上げた当初は、技術を熟知した田中氏の存在がそのまま、技術に強いという会社イメージとなった。人数が増えてもそのイメージを保ち続けるために、同社は常に技術へのモチベーションが高い人材を集め、コミュニケーションを図りながら高め合い、技術的なチャレンジができる環境を整えることに努めている。
アシアルの東京オフィスには世界中からエンジニアが集まって仕事をしていたり、海外のパートナーと協働したりと、多くの外国籍メンバーと働くのが日常になっている。また、各分野において高い専門性をもつメンバーが在籍している。「一人一人の意見の相違を尊重し、誰でも意見を言い合えるチームを形成することを、何よりも大切しています」(田中氏)。
様々な事業を展開しているが、どれも実際にものづくりを行うエンジニアやデザイナーが中心となってチームを構成し、進められている。「サーバーインフラからUI設計、ビジュアルデザインなど、それぞれに強みを持つメンバーが意見を出し合い、協力し合い、進めています」(田中氏)。
オフィスの中には、どうやって新しい価値を創造するか、その実現に想いをのせた技術的な話題で溢れている。
同社は常に世界を見据えている。アシアル(Asial)の社名には「Asian Leader」の意味がこめられている。技術という世界共通の言語を得て、軽々と日本という枠を飛び越えるのだ。実際、同社の製品には日本よりも海外で売れている製品もある。世界の最先端の情報を得るために、サンフランシスコにも拠点を設けている。創業時、「数人で大きなシステムを作るプログラマーはすごいと思った」という田中氏。その思いは脈々と世界へと続いているのだ。
ビジネスセンスを得たエンジニアは最強。世界を目指して突き抜けろ!
「インターネットをめぐる環境はこの3年~5年でまた大きく変わるだろう」―田中氏はそう予見する。「最初はパソコン、次がスマートフォン。いわばポケットの中のインターネットになり、次はアクセスしなくても日常のなかで常にインターネットにつながっている環境になるのでは」と。そのなかでアシアルが目指すのは、技術をもってインターネットをより便利で快適にすることだ。「インターネットをより表現豊かに、よりいろいろなことができる世界をつくる一翼になりたい」と田中氏は言う。それこそが、田中氏がアシアルという会社を通じて世の中に提供したい価値でもある。
ただプログラミングが好きというだけではなく、それをどう世界に役立てるか。どんな人とコラボレーションして価値を高めるか。そんなビジネスの視点を持ったとき、エンジニアの可能性はより大きく広がる。田中氏は創業した21歳のときにそう痛感した。だから社員にはみんなそのような感覚を持ってほしいという。
そんな田中氏の生き生きとした思いや夢が社内に浸透しているのだろう。社内は明るい雰囲気だ。「つい最近転職してきたメンバーが『みんなの目が輝いている』と日報に書いていました」と田中氏は笑う。それだけ世間には疲弊した会社も多いのだろう。アシアルは、その対極にある。
離職する人も極めて少ない。「エンジニアの会社」を標榜し、常に技術へのチャレンジができるこの会社は、自分を高めたいという気持ちのあるエンジニアには大きな魅だろう。そしてここには仲間もいる。毎週1回「ソーシャルランチ」と称して、社員全員で昼食をとる。メンバーが買い出しをしてカレーライスをつくるといった簡単なものだが、だからこそ温かみがある。他愛のない話、技術の話、プロジェクトの話などを織り交ぜながら、和やかななかにも高め合う雰囲気が満ちている。楽しく夢を持ち、世界を目指して突き抜けたいという新たな仲間を、アシアルは待っている。