オグルヴィ・ジャパン・グループ

現在、私たちの日常でも普通に使う「ブランド」という言葉。実はこの言葉を、今日のような意味で最初に使ったのは、オグルヴィの創始者、デイヴィッド・オグルヴィであることをご存じだろうか。

かつてのアメリカの広告は、商品のセリング・ポイント（売るポイント）をひたすら消費者にアピールする「ハード・セル」が主流だった。しかしコピーライターだったデイヴィッドは、アイデアにこだわるクリエイティビティを重視した「ソフト・セル」の方法論を提唱した。

彼は1948年にニューヨークでオグルヴィ・アンド・メイザーを設立。
デ イヴィッド・オグルヴィの登場により、広告は今までの概念から一歩前進して、その結果、彼は「近代広告の父」と呼ばれるようになった。オグルヴィ・アン ド・メイザーは世界120カ国に450のオフィスを構える世界屈指の広告企業へと成長し、さまざまな業種にわたって企業活動をサポートしている。

日 本では、1995年に「戦略プランニングとクリエイティブの力で課題を解決する総合広告会社」として、オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパン株式会社を 設立。「ブランドの真の価値を知る人に最も高く評価されること」をミッションステートメントに掲げ、多岐にわたるマーケティング・コミュニケーションサー ビスを実施している。

現在、グループ内にはそれぞれ専門分野を持つ5つの会社と、2010年に新たに立ち上げたデザイン部門がある。

オグルヴィ・アンド・メイザーが目指しているのは、「商品を売る力のある優れた広告＝Great Work, That Works」をつくり、企業の課題を解決していくこと。
消費者がどのように商品と関わり、商品にどのような感情を抱いているかを洞察し（同社では「消費者インサイト」と呼ぶ）、人々の心の奥底に訴える広告を創造する。それによって、クライアントの売上やROI（投資対効果）の向上を実現していくのである。

オグルヴィ・ジャパン・グループは、今までの常識や固定観念を打ち破り、メディアやコミュニケーション手法の枠にとらわれない斬新なサービスをクライアントに提供し続けてきた。そこには、広告業界の先駆者であり改革者らしい6つの特徴がある。

（1） 質の高いクリエイティブ
同社が何より重視しているのは、創業者のデイヴィッド・オグルヴィが提唱したとおり、消費者の心の奥底にメッセージを届ける力をもつ、質の高いクリエイティブ。
どのようなクリエイティブが人々の心をとらえるかは、マーケットによって異なる。したがって、クライアントがグローバル企業である場合でも、グローバルで使われているクリエイティブにとらわれずに、独自の表現を開発することがある。

（2） メディアやチャネルに拘束されないコミュニケーション戦略
実 は日本の広告会社は、メディア売買で利益を得るケースが多いため、クリエイティブよりもむしろメディア選択を優先している。しかし同社は、あらゆるメディ アを対等にとらえ、クライアントの課題に応じて最適なメディアを選択し、組み合わせていく「メディア・ニュートラル」という考え方を重視。
クライアントからの依頼を忠実に実現するのではなく、クライアントが置かれている状況、課題、ターゲット、将来像等を考え、クライアントのビジネスを発展させるメディア選択やクリエイティブを主体的に提案していく。

（3） 透明性を重視した報酬体系
オグルヴィでは、場合によってはクライアントとインセンティブ契約（成功報酬）を結ぶことがある。このようにモチベーションを共有することで、真のパートナーシップを構築していく。

（4） 変幻自在にチームが形成できるマトリクス組織
ク ライアントの課題に応じて、グループ各社から最適な人材を選んで、チームを結成。スタッフはすべて、各専門分野のプロフェッショナルであり、その中心には ブランド・リーダーがいる。特定のコミュニケーション分野や会社の枠にとらわれず、そのつどベストのチームを構築できる変幻自在な柔軟性も、同社の大きな 強みだ。

（5） 独自の管理運営システム
クライアントとの初めての仕事の際は、独自の管理運営システムを用いて、クライアント とともに緻密なスケジューリングを行う。市場に新規参入するクライアントの場合は、市場調査を実施して、ブランドのポジショニングを策定することも。場合 によっては、そのクライアント独自の管理運営システムを開発するケースもある。

（6） 迅速かつリーズナブルなプロダクション・サービス
日本の大手広告会社の多くは、クリエイティブ・ワークを外部に委託している。しかし、その分ワークフローが煩雑になり、迅速なハンドリングが難しく、コストが割高になっている。
オ グルヴィは、グループ企業に制作専門会社レッドワークス・ジャパンを抱えている。制作をグループ内で行うことによって、迅速かつリーズナブルな料金でクラ イアントに制作サービスを提供しているのだ。シンプルなクリエイティブであれば、オグルヴィのクリエイティブ・チームを経由せずに、直接レッドワークスに 制作を発注することもできる。この方法により、クライアントはコスト削減を図ることができる。

以上のような特徴を生かした独自のブランディング・ノウハウとクリエイティブ力がクライアントに高く評価され、現在は国内外の名だたる大手企業がクライアントとして名を連ねている。

オグルヴィが一番大切にするものは、「ブランド」。世の中とクライアントに対して、十分にブランドの価値を高めることを使命とし、クライアントと「ブランド・チーム」を結成する。同社では「出る杭がチームを、また他のチームを強く成長させる」という考えに基づき、創意に満ちた異端児を評価する、という。求める人材のポイントは、主に5つ。

（1）Curiosity
新しい知識を吸収することに貪欲であり、得た知識を深い洞察にまで至らせることができる。
（2）Agility
鋭敏で行動力があり、無用な形式に縛られず、境界を乗り越える勇気がある。
（3）Passion
素晴らしいものにめぐり会った時、興奮で身ぶるいしてしまうような感性を持っている。直感的に善悪を見極めることができ、周りの人を刺激してやる気にさせる情熱に溢れている。
（4）Bravery
素早く、断固たる行動をとれる。逆に、踏みとどまるべき時はいつかを知っている。仲間が勝利を得るために手助けできる。
（5）Accountability
約束を守る。仕事の成り行きを見通すことができる。最終的な結果に対して責任をもてる。仕事をやり遂げることにプライドをかける。

消費者はときに企業を上回るプロフェッショナルとなる。だからこそ、オグルヴィの社員は常識を広く身につけていなければならない。分析力、創造力のハードな トレーニングは不可欠だ。学習意欲に満ち溢れ、既存概念に捉われず、柔軟な考えを持つ。そして自分の成長を常に意識する人であれば、自らの力を存分に発揮できる企業である。