「安全」「高品質」世界のデルモンテブランド
世界的に有名な「デルモンテ」ブランド。ケチャップを思い出す人が多いだろうか?米国DelMonteCorporationでは、生鮮果実・野菜、加工食品、調味料などを1886年から製造・販売している。同社の日本市場での展開は、生鮮果実・野菜・加工食品部門・調味料部門とで異なる企業体に任せており、ここで紹介するフレッシュ・デルモンテ・ジャパン株式会社は、DelMonteCorporationの100%出資現地法人として、「デルモンテブランド」のもとで青果を輸入・販売している。
Del Monte Corporationの前身である企業が、自社の高級ブランドであった「Del Monte」に対して厳しい品質規格を設けて以来、デルモンテブランドは世界の消費者に「安心のブランド」というイメージを与えている。
「Del Monte」ブランドがアメリカで初めて登場した時から100年を経た現在の日本においても、品質に対する取り組みは変わらない。「安心」「高品質」のおいしさを日本市場に届けるため、フレッシュ・デルモンテ・ジャパンは独自の戦略で展開を続けている。
日本のバナナの5本に1本はデルモンテ。シェア獲得の戦略とは
同社が取り扱う商品の約80%はバナナだ。そのほか、約15%がパイナップルで、残りの約5%がぶどう、アボカド、柑橘類、キウィフルーツなどのその他果実となっている。
バナナはフィリピンの高地(ミンダナオ島)にある自社管理農園において大切に栽培される「謹選 農園限定 ハイランドハニー」が戦略商品。標高約500~900mにある農園には、たっぷりの日差しと肥沃な土、豊富な水があり、昼夜の寒暖差が大きいことから一般的なバナナよりもゆっくりとした速度で育てられるという。その結果、甘さのものとなるでんぷん質がたっぷりと蓄えられ、コクと甘みに優れる上品な味のバナナができる。
その後、鮮度を保つために細かく計算されたスケジュールに則り、専用船に乗せられて日本に輸送される。バナナは皮が青い状態でなければ日本には輸入できないため、通関後は「室(むろ)」と呼ばれる加工所で専任のQA(QualityAssurance)スタッフ、ライプナー(バナナを熟させる専門家)がついてベストの状態に仕立てあげる。
また、「デルモンテ ゴールド」の名で市場に出回るパイナップルは、長年にわたる研究の末に同社独自の技術で開発した高級パイナップルであり、高い人気を集めている。現在では、「ゴールデンパイン」という名前で同様のパイナップルが多数販売されているが、その先駆者は同社なのだという。
現在、日本には多くのバナナブランドが乱立している。輸入商社も数多く、各社がしのぎを削っているが、そんな中で同社のバナナは確実に存在感を示しており、実に「日本のバナナの5本に1本がデルモンテ」(代表取締役 山田氏)だという。
その強みは、やはり絶大なブランド力。安心して食べられる高品質のバナナとしてのデルモンテブランドは、同社の何よりの財産だ。それを守り続けるために、同社ではブランドエクイティーのコントロールに注力している。
販売戦略も特徴的だ。他社がテレビCMによるプロモーションを盛んに行っているのを尻目に、同社は「バナナを身近にする」というコンセプトで、「実際に食べて感じてもらう」ため、消費者に近いところでの地道な販売促進活動を中心としている。たとえば、バナナを使ったクッキングスクールや、フルーツ食育、スポーツイベントのサポートなどだ。店頭キャンペーンも多い。このため、マーケティングチームとセールスチームが協働して活発な販促活動を行っている。
このような同社の戦略には、同社がかねてから持つ流通ルートを大切にしているという背景がある。昔からの付き合いがある市場や街の八百屋さんが同社のよき理解者なのだ。こういった販売戦略を理解し、支援してくれる小売店との共同作業により、同社のバナナは消費者の手に届けられる。「当社は後発組。既に大手が入り込んでいるマーケットでシェアを上げるには、選択と集中によりチャネルを開拓し、確実にファンを作ってリピートオーダーを狙うしかない。」と山田氏は説明する。
今後は主流になりつつある量販店に対してもいっそうの販売攻勢をかけていく方針で、セールスチームへの期待は大きくなっている。
同社のもうひとつの特徴であり、強みであるのが、徹底したローコストオペレーションだ。同社にとって何よりも大切な品質を保ちつつ、コストを削減することで、そこに利益が残る。一般に燃料高騰などでコストが上がる局面において、同社は他社よりも体力の強さを見せる。
今後もこのローコストオペレーションと、流通網の増加によるシェア拡大を目指していく。
世界のデルモンテ社員が同僚
同社では、Country Directorである山田氏をトップに、セールス・マーケティング、ファイナンス、ポートオペレーション、カットパインオペレーションの各部にディレクターを置いている。そのほか、人事、総務、ITなどの部門は山田氏の直轄となっており、アジア・パシフィック地域のヘッドクオーターである香港に対してレポートを行う。
米国本社はマイアミにあるが、QAやセールスのミーティング、顧客のアテンド、研修などの機会に出張することもある。また、日次、月次のレポートは山田氏が行うが、各部のディレクターが行うことも多く、一定クラス以上では英語力は必須だという。
日常業務においても、同社の社員は世界のデルモンテ社員達の同僚であり、電話やメール、電話会議などでコミュニケーションを取りながら仕事を進める。そんなグローバルな仕事ができるのも、同社の魅力のひとつだろう。また、少人数での運営を行っているため、社員一人ひとりが持つ裁量権は大きく、やりがいも大きい。世界の「デルモンテ」ブランドを担う仕事は魅力的ではないだろうか。