社員が5人しかいなかったDeNAに参画したエンジニア。最初の仕事はLAN環境の構築。
茂岩 祐樹氏
システム統括本部 IT基盤部 部長
Yuki Shigeiwa
東京都立大学大学院工学研究科修了後、日本アイ・ビー・エム株式会社に入社。1999年DeNAに入社。ビッダーズの立ち上げから関わり、大規模コンシューマ系ネットサービスのITインフラ専門家として活躍。現在は、IT基盤部部長として、ディー・エヌ・エーグループのサービスをモバオク、モバゲーといったサービスを安定稼動させることに心血を注ぐ。
![]()
IBMという大手企業でのスペシャリストからDeNAに転職し、今では日本一のトラフィック数を誇る数々のサービスのインフラを支え続けている茂岩氏。「ユーザ・株主・会社などのステークホルダーに求められるインフラ要件を満たす」という同氏の言葉には、常に事業全体を見渡しながらインフラを考える姿勢が見てとれる。会社が小さかった頃から、プロとしての強い意識を持って取り組んで来たからこそ語られる話は、縁の下の力持ちであるインフラエンジニアにとって刺激的なものだろう。
取材・文/渡邉昌資/佐藤ゆき恵 2010年2月17日
DeNAに入社したきっかけについて教えてください。

もともとは、新卒で日本IBMに入社し、4年半ほどストレージの技術サポートグループで仕事をしていました。DeNAに転職したのは1999年の9月ですが、その数ヶ月前に、現在は取締役となっている先輩社員から、会社立ち上げのメンバーとして加わってほしいと誘われました。当時は最初の事業であるビッダーズもまだない状態で、社員も5人ほどでした。
IBMは良い会社ですし、ストレージというニッチな分野で専門性を高め、海外も視野に入れて働いていこうと思っていたので、最初は何度か断ったのですが……。お金がないので机や椅子をもらってくるといったオフィス作りの手伝いをしているうちに、「一日でも早くサービスを出そう」とものすごいスピード感で仕事に取り組んでいる社員達に触発され、入社を決意しました。
正直に言って、当時はこの会社がこんなに大きくなるとは想像もしていなかったですし、いつつぶれてもおかしくないと思っていたので、自分がやらなくてはどうしようもないと心を決めて仕事に向き合っていました。

前職はストレージという分野で専門性の高いお仕事していたのに、その後に入ったDeNAではWebサービスに携わると、まったく違う分野に戸惑いはありませんでしたか。

もちろんありました。ストレージについては非常に詳しかったのですが、DeNAでの最初の仕事はLAN環境を作ることで、今となってはおかしく思いますがとても苦労しました。取り組むすべてが新しい事柄で、自分で色々と調べながらやっていくしかなかったので、まさに試行錯誤の過程でした。
また、当初インフラのエンジニアは私一人しかいなかったので、誰にも聞けないという不安が常にありました。人に頼ることなく色々な意思決定をするプレッシャーは相当なものでした。しかし、今でもインフラ担当がそれほどたくさんいるわけではありません。モバゲータウンの専任は6名、ネットワークの専任は2.5 人(兼務含む)と最低限の人数で対応しています。
サービスのトラフィックの大きさを考えると、かなり少ない人数のように感じますが、それはなぜですか。

ネットワークを含めたインフラは頭数が多ければ多いほどよいというものではなく、むしろ多くのことをこなせる少数の人員構成のほうがスピード感を持って施策を実現できると考えます。コストの観点からもこれまで少数精鋭の考え方できました。とはいえ規模に比例して作業量が増えてくるのも事実で、体制の強化も重要施策のひとつとして取り組んでいます。
本質的には開発とインフラはシステムを構成する要素として一体のものです。アプリを知らないとチューニングはできないですから。サービスの特性、アプリケーションの構造を知り、事業全体の動き、特に将来の方針を把握して、投資が最大の効果を得られるようにシステムを設計・運用するかが重要なポイントです。
新規サービスの構築の際、性能面での考慮について工夫しています。インフラ的には本来は大規模になった際に最適な性能が維持できるようにシステム構築すれば後々都合がよいのですが、一般的には性能面を十分に考慮して開発するためには余分な工数が必要になります。一方で新規サービスは出来るだけ早く市場に投入することが望まれます。
新規構築の事業はスモールスタートを前提に、早期の投入、成功しなかった場合のロスを最小にして、かつ成長した場合にやるべきことの筋道を踏まえたシステム構成の検討を行えるよう工夫します。

今後に関してはどのような展望をお持ちですか。

海外進出を意識していますので、その際にどうしていくのかを長期的な視点で考える必要があると思っています。特に、「Google」、「Amazon」、「Facebook」などの成功している大規模ネットサービス企業の動向は気にしています。今後、海外のエンジニアとのリレーションも増やしていきたいとも思っています。
課題は、先ほどから言っていることと変わりません。いかに経済的に有利なインフラ作りを継続していくか。安くて、サービスに求められる安定性を担保しながら、トラフィックの急激な伸びを吸収できるインフラを構築することを目指して、高いレベルで、あらゆる側面から工夫をしていきます。
個人の意識としては、「何も起きないこと」を目指してそれを実現していきたいと思います。そもそもインフラは問題が表面的になってはいけないのです。何も起きずに、常にサービスが安定して稼働している状態を目指します。
プロフェッショナルとしての意識ですね。

会社が小さいうちから見てきたことで、どこからどのように給与が出ているのかも分かっていますから、事業全体を視野に入れて自分の仕事に取り組むことが当たり前になったのかもしれません。
たとえば、ネットワークやデータセンターなど構築に時間がかかるものについては、明日必要だといわれても簡単に準備できない場合もあります。。インフラ要因でサービスの足を引っ張らないために事前に多くの資源を確保しておけば実現できるものもありますが、過剰な供給により事業リスクが大きくなる可能性があります。どうすればバランスするのか、ぎりぎりのところでどう折り合いをつけていくかという問題に常に向き合っていきます。
結構しんどい時もありますが、逃げずにやってこれたのは難しい問題を解決した時は楽しいからかもしれません。
自分の意識としては当たり前のことをやっているだけです。エンジニアの仕事とはそういういうものだと思っています。ちゃんと自分の頭で考えて、仮説を立てて検証し、解決策に近づいていく。そういう当たり前のことを繰り返すことが大切なのです。

茂岩さんにとって、この仕事のやりがいは何ですか。

日本一のトラフィックを持つサービスに携われること、コンシューマサービスゆえに、人に自分の仕事を分かってもらいやすいこと、それから自分の考えで新しい技術を取り入れるといったことが可能な点でしょうか。新しい技術については、会社や事業やユーザが求めることを満たし得るのなら、前例にとらわれずにポジティブに取り入れるのが当社の文化です。自分で調べて色々と試すことができますので、そういったことが好きな方には面白いと思います。
また、開発・インフラ両方について言えることですが、エンジニアの層が厚くなってきており、ベテランもいますし、優秀な人も多く入社してきているので、師匠として仰げるような人がたくさんいます。一流エンジニアになりたいという人にとっては、良い環境になりえるのではないかと思います。
茂岩氏の話を聞き、膨大なトラフィックを抱えるサービスを支えるエンジニアとしての気概、プロフェッショナリズムをひしひしと感じることができた。困難な状況でも常に前向きにとらえ、貪欲に新たな知識を吸収しながら、日々やるべきことを一つ一つ積み重ねていく。そして振り返れば誰にも代わりがつとまらないエキスパートになっていた。目指すべきプロフェッショナルと共に働きたいエンジニア、そのような人と切磋琢磨したいエンジニア、いずれの期待にも応えられる人材が揃った環境はそうないだろう。

モバゲータウンマスコミ取材風景
株式会社 ディー・エヌ・エー(DeNA)
新しい価値と感動を提供するために、挑戦し続けるプロフェッショナル集団
2007年12月には東証一部上場を果たし、モバイル業界におけるリーディングカンパニーとして新たな価値を社会に提供し続けている株式会社ディー・エヌ・エー。 特に、「モバゲータウン」「モバオク」をはじめとしたモバイル関連サービスは、携帯電話のユーザーニーズを的確に捉え、爆発的な成長を遂げている。今後は、モバイルの領域で際立つ独自性をより一層追求。さらにはそのノウハウを結集することにより、「国際事業」「新規事業」へと、事業領域を次々に拡大していく予定だ。
| 資本金 | 43億2887万円 |
| 設立年月 | 1999年3月 |
| 従業員数 | 540人 |
| 平均年齢 | 30.6歳 |
