株式会社デジサーフ

株式会社デジサーフは、バーベキュー（以下、BBQ）場を運営するIT企業である。BBQ×ITとは不思議な取り合わせだが、同社は元々、イベントやウィンタースポーツの大会へのエントリーサイト、『デジエントリー』を運営していた。自治体主催の大会へのエントリーなども手がけていた縁で、とある自治体から公園にあるBBQ場の予約サイトを作ってくれないかという相談を受ける。代表取締役の高橋佳伸氏は即座に、「予約サイトは無料で作ります。そのかわりBBQの食材販売サービスとセットにして、その売上の一部を当社がもらいます」というレベニューシェアを提案した。自治体にしてみれば、費用負担なく予約サイトができ、物販収入も生まれる。たちまち合意に至った。これがO2OのBBQ場予約＆運営サービス、『デジキュー』の誕生だ。

当初は予約とECからスタートした『デジキュー』だが、やっていくうちに、今度は「BBQ場の運営も任せられないか」と相談を受け、そのうち、評判を聞きつけた他の自治体からも、BBQ場を立ち上げからビジネススキーム構築、その後の運営までを一貫して任せたいと相談されるなど、ITからリアルへとビジネスが大きく展開した。

初めて立ち上げから任されたBBQ場で、高橋氏は、機材使い放題・食材は持ち込み自由で一律料金という、今の『デジキュー』のサービススタイルを確立。これが、機材はなくとも気軽にBBQを楽しみたいという層に受け、大成功をおさめる。さらに機材なし＝車不要ということで、都心の遊休地や商業施設屋上など、BBQ場として使える場所も一気に拡大した。手ぶらでBBQを楽しむ新しいスタイルとして、同社の手がけるBBQ場はメディアにもしばしば登場し、注目を集めている。場所を選ばず出店できるよう、メンテナンスの簡単な専用機材を開発するなど独自の工夫もこらし、出店、売上ともに右肩上がりに伸びている。

「でも、あくまでも当社はIT企業」と高橋氏。リアルのBBQ場運営で様々なノウハウも蓄積した今、今後は、旗艦店舗を除いて運営はフランチャイズ化し、プラットフォームビジネスとして、『デジキュー』をさらに発展させていく考えだ。BBQ場の予約と食材のネット販売、BBQ運営者向けの専用機材の販売、遊休地やオフシーズンリゾートなど様々な立地を活用した新たなBBQスタイルのプロデュースといった、ITや企画力を活かした方向にビジネスをシフトしていく。

都心の商業施設屋上など、今までにない発想で手がける同社のBBQ場は、BBQへの潜在ニーズを掘り起こし、一方で有効活用されていなかった場所や土地を、稼げるスペースに一変させた。同社と土地・建物のオーナーとのWin-Winの関係を築き、新たな出店要請も絶えない。IT企業なのに、立派にリアルBBQ場を運営し、オリジナル機材まで作ってしまう。このユニークな姿は、そのまま高橋氏のユニークな経歴とリンクする。

元々エンジニアだった高橋氏。「会社員時代、他の人の3倍の成果を上げ、定時で帰宅していたので給料は定額。残業を沢山して、自分の3分の1の仕事しかしてない人のほうが、はるかに給料が高いのです。納得いきませんでしたね」と、笑いながら当時を振り返る。会社員であることに疑問を感じ、独立。自ら会社を起こし、SESサービスを手がけながら、自身はスキーやサーフィンに本気で打ち込む生活に転じた。その生活の中で2000年に生まれた、波の様子をWebカメラでリアル中継するサービス『波通』が、インターネットの個人利用が急激に進んでいた当時の時代背景ともマッチしてヒット。その後も、イベント予約とネット決済を組み合わせた『デジエントリー』など、高橋氏自身が日々の生活を楽しむ中で生まれたアイデアが、ちょうど時代や人々のニーズにはまり、大きく展開していくことになる。その一つの集大成が、『デジキュー』だ。

20代後半から30代前半を自由人として過ごした高橋氏だが、今ではこの事業を、この会社を本気で大きくしようと完全にビジネスの世界に戻ってきた。ユニークな経歴を背景に生まれたアイデアと、優秀なエンジニアだった高橋氏が元来持っている物事の本質をとらえ、PDCAを的確に回していく力が融合し、『デジキュー』は急成長を遂げている。

ところが、こんなにヒットしているのに、追随する企業はないという。理由の一つが火を扱うだけに運営実績が重視されることで、もう一つはオリジナル機材まで投じて徹底的に効率化していること、さらに付け加えるならば、「持ち込み化」や「屋上」といった既存の飲食店経営者が敬遠する要素がそろっていることなどが、参入障壁になっているのだ。「ニッチだけど実はとてつもなく大きな市場。まさにブルーオーシャンです」と高橋氏は言う。

このビジネスの有望性に、多くの優良な出資者も集まっている。海外からの引き合いもある。BBQ×ITの可能性をさらに追求し、いずれ上場にグローバル展開と、同社の展望は果てしない。そしてそれは、きっと実現できる未来図に違いない。

とはいえ、決して常に順風満帆だったわけではない。「BBQ場の引き合いは多いですが、出店には初期投資がかかります。当初は銀行に行っても、『屋上なんて誰が来るの？』と言われ、社内で反対意見も出る。この3～4年は本当に苦労の連続でした。やっと今、理解してくれる出資者が現れ、スケールしていく環境が整ったところです」（高橋氏）。

それは、他の人がやらないことに挑戦し続けたからこその苦労だ。今後も、挑戦に伴う苦労はきっとあるだろう。だがその苦労や困難も含めてやりがいと思える人に来てほしいと、高橋氏は言う。「時代の変化に合わせて、これからも常に殻を打ち破らないといけないと思っています。変化こそが生き残る術であり、変化できる組織でなければならない。これまでは僕が引っ張ってきましたが、これから上場を目指すにあたって、DNAは受け継ぎつつ、創業者がいなくてもまわる組織に変革していくステージにあります。」

レジャー白書によると、旅行に次いで多くの人が楽しむレクリエーションであるBBQ。そのBBQに手ぶらで集まって楽しむという新しいスタイルを生み出し、恐らくBBQ人口の裾野拡大に一役も二役も買っているデジサーフ。BBQ場の現場のメンバーはもちろん、エンジニアをはじめ後方で支え、仕組み化を担うメンバーにとっても、人々の幸せな時間を創出するこの仕事は、大いに手応えを感じるものだろう。

「波通」で有名になったデジサーフのオフィスは今も湘南にある。メンバーの多くは職住近接で、子育てや趣味などプライベートも大事にするのがデジサーフ流だ。中には、波に乗ってから仕事に来る人も。働きやすい会社づくりにも注力し、女性のメンバーも多数活躍している。湘南ライフを楽しみたい人はもちろん、今後は、国内外含めて拠点も増やしていくので、様々な場で活躍するチャンスがあるだろう。

魅力的な社風が生んだ魅力的なサービス。それをブラッシュアップし、世界も視野に展開しようとしている今、その一翼を担う気概ある人材を求めている。このブルーオーシャンに魅力を感じる人は、ぜひ同社を訪ねてほしい。