株式会社イッカ

株式会社icca（イッカ）を訪ねると、メンバーは皆、にこやかに迎えてくれる。そのメンバーに混じって存在感を発揮しているのが、白くモコモコした羊のようなキャラクター、ブクブクだ（泡にまみれた謎の生物だとか）。大きなパネルもあれば、ソファーにはぬいぐるみのブクブクもちょこんと座り、空間全体をほんわかとした空気にしている。

iccaはWebのプランニング・制作を中心に、デザインからブランディング、ライセンス管理など一連のキャラクタービジネス、そしてWeb以外にもグラフィックなど様々な制作を手がけている会社だ。「あらゆるコンテンツをデベロップする」という言葉を掲げ、魅力あるコンテンツを生み出し続けている。Web会社であり、デザイン会社であり、制作会社でもありと、様々な顔を持っている。

ちなみにブクブクは、『ブクブクアワー』というiccaが手がけるキャラクタープロジェクトの主人公。iccaがマネジメントをしている新進女性アーティスト、ヨシヤス氏がデザインしたもので、JR東日本企画やメディアファクトリー（当時。現在はKADOKAWAの社内カンパニー）と組み、メディアへの露出やグッズの企画など数々のビジネスを展開している。JR駅構内などで、このキャラクターを目にしたことがある人もいるかもしれない。2009年にスタートし、入浴剤に起用されて爆発的大ヒットとなったり、LINEのスタンプになったりと、息長く続いているプロジェクトだ。

ところでオフィス内にはもう1人（1頭？）、キュートな雰囲気をふりまいているクマの女の子がいる。おしゃれな服を着た『ガーリーベア』という、外務省も後援するメジャーなファッションショー『東京ガールズコレクション』にも毎年登場している、girlswalker.com公式キャラクターだ。このような数々のキャラクターだけでなく、自社プロジェクトとしてグッズを生み出したり、オフィスのそこかしこに、iccaが生み出した様々な作品がちりばめられている。

オフィスのそこかしこにある様々な作品。ついひとつひとつどんなビジネスなのかを聞きたくなる。それはそのままiccaの歩みでもある。ユニークでワクワクするようなプロジェクトをいっぱい仕掛けてきた会社、それがiccaだ。

様々な顔を持つiccaだが、現在、仕事のボリュームとしていちばん多いのはWebサイト関連の仕事だ。デザインから制作、運用までを一貫して手がける。次いでキャラクタービジネス、さらにはデザイン力やプロデュース力を活かした自社プロダクトの制作、販売も行っているというのがiccaの全容だ。自社プロダクトは、おもしろいものづくりがしたいというiccaの原点を形にしたもの。今後はさらに力をいれ、事業構造のなかでも比重を高めていきたい意向だ。

自社プロダクトの中からユニークなものを一つ紹介する。新感覚の温泉タオル、『LOVE&TOWEL（ラブアンドタオル）』。使い勝手よく、進物にも最適なのに、ファッショナブルとは対極にある温泉タオル。それを真面目にデザインしたというものだ。詳しくはiccaのWebサイトで実物を見てほしいが、その馬鹿馬鹿しくもカッコイイタオルは、TVなどでも紹介され話題に。小売りのほか、企業が一括で購入するようなニーズもあり、ビジネスとしても順調だ。

メインのWeb制作の話にもどると、iccaはこの領域でもまた、世の中によくあるWeb制作会社とは違った個性を放っている。特長の一つとして、大手企業との直接取引が多い点だ。裏方的な存在なのでiccaの名前が出ることはないが、聞けば大手メーカー、外資有名アパレル、大手出版社など名だたるクライアントばかり。今や数々のユニークな実績をたよりに、営業活動はせずとも口コミや紹介で話がやってくるという。

実際に制作したものを見せてもらうと、そのテイストは様々だ。キャラクターに強いiccaらしいかわいい雰囲気のものもあれば、ロジカルにメッセージが伝わってくるように設計されたものも。単に「カッコイイ」、「きれい」、「かわいい」ではなく、クライアントの課題を解決する手段を模索した結果が、この多様なテイストになっている。

Webサイトでクライアントの課題を解決するには色々なアプローチがあるが、iccaの場合はデザインで解決する。文字でこう書くといかにも安易だが、それを綿密な計算や経験値に基づいた最適な表現で、高いレベルで実現するのがiccaだ。だからこそ名だたる大手企業が、社員数7名のこの小さな会社にわざわざ相談にやって来るのだろう。Webに限らず、時にはグラフィックやリアルのイベントも提案する。様々なものづくりを自在に組み合わせられることも、同社の強みだろう。

そんなiccaは今年、設立14周年を迎える。今後どういう方向にいくのか。「それは、これからiccaに来ていただく方とも直結すると思います」と、同社は言う。「業務内容はこれ」と固定していないiccaだけに、新しい力が入ればまた会社としての引き出しが増える。「ものづくり」という大きな括りのなかで、新しいことにもどんどんチャレンジしたい意向だ。

だから、求めるのはチャレンジする気持ちがあり、どんなことにも楽しんで取り組める人だ。たとえばWebデザイナーとして入社しても、その仕事だけとは限らない。前述のガーリーベアのプロジェクトでは、東京ガールズコレクションへの参加をはじめ、いくつかの大きなイベントを実施した。時にはiccaのメンバーも現場に出向き、職種は関係なく立ち働く。そんなあれこれを一緒に楽しめる人がいい。

仕事のやりがいは、クライアントと直接向き合って課題や要望を聞き出し、解決手法を一から構築して、実現していくこと。さらに言えば、そのプロセスすべてをただ漫然と体験するにとどまらず、自らが主導していけるということだろう。少数精鋭の会社だけに、一人一人の役割は大きい。クライアントも名だたる会社ぞろいだ。要求水準は高いが、チャレンジしたいという気持ちの大きい人には、またとないステージに違いない。

世の中に制作会社は数多くある。地道にコツコツと仕事をこなしていくような会社もあれば、尖った個性を持つ会社もあるだろう。そのなかでiccaは、「独特の世界観がある会社」という言い方がしっくりきそうだ。キャラクタービジネスや自社プロダクトなどビジネスの独自性もさることながら、その制作物すべてやオフィスが醸し出す雰囲気に、独特なiccaらしさが漂っているのだ。ほんわかしたかわいいものばかりではなく、ポップなものもあれば、エレガントなものも。その多彩な世界に、宝箱をひっくり返したようなワクワク感を感じられる人が、iccaにもっとも「はまる」人だろう。

現メンバーは7人。iccaワールドをとことんおもしろがれる人が集まったからか、個性が光るなかにも一体感がある。一人一人がパズルのピースのように、なくてはならない役割をもって一枚の絵になっているicca。新たなピースが加われば、さらに素敵な絵ができるに違いない。そんな個性あるメンバーの参画を待っている。